新 ナイトウォリアー夜話生霊編〜ナイトウォリアー、殺人の現行犯で逮捕する!

新 ナイトウォリアー夜話
生霊編
〜ナイトウォリアー、殺人の現行犯で逮捕する!〜


 今ではないとき、ここではない場所。
 周りは「ファイナルファンタジー
VII」の世界なのに、なぜか多分に大正から昭和初期の日本に近い雰囲気を持つ東方共和国。ほとんど事件や事故の起こらない警察署の、とある交番の受持区内で起こった、最初で最後かもしれない大事件の話。


クリックすると拡大されます

 高村巡査と宗村巡査の二人は、黒の詰襟、肩章で階級を識別する制服に、銀色に光るサーベルを吊り、受持区内を警らしていた。時間は深夜2時。二人が勤務する交番は住宅と事務所、商店が混在している、事件や事故はめったに起こらないが、そのかわり、神羅カンパニーの東方共和国支社という厄介な存在がある。今のところ目立った動きはないが、本署の公安課はスパイ行為をするのではないかと怪しんでいる。
 「神羅の本社のあるミッドガルでは、全身黒ずくめで、背中に大きな剣を背負った暗殺者が出ているんだってね。」
 宗村がいうと、高村が返す。
 「ナイトウォリアーか。当直部長の内藤巡査部長殿も、そんなことを言っていたな。」
 神羅カンパニーの本社のあるミッドガルでは、神羅関係者を恐怖で震えあがらせ、反感を持つ者の溜飲を下げる存在が活躍している。
その名は、ナイトウォリアー。夜にしか現れず、全身黒ずくめの革製品で固めていて、音もなく現れ、去っていくからついた二つ名だ。神羅関係者の間では、「黒い死神」と呼ばれていると聞く。
 動作は俊敏、自らの身長ほどはあろうかという剣を操り、今まで数々の神羅関係者を葬ってきた。何十人単位の神羅警備兵やソルジャーで固めてあったとしてもだ。
 さらに彼女…斬られたものの命を取りとめた者の証言によると…は、写真や映像にその姿を残さないから、なおさら謎めいた存在になっている。神羅に近い筋、反対の立場を取る筋、中立系問わず、様々な報道カメラマンがその姿を押えようとしているが、いまだにできない。というのも、現像作業中に失敗したり、カメラの蓋が突然開いて撮影したフィルムが感光するぐらいなら日常茶飯。神羅系のカメラマンなど「我の姿を撮ることは、許さん」とカメラだけを斬られたという、怪談じみたうわさが広まっている。
 就勤前の訓示で、当直司令の内藤巡査部長は、
 「共和国内に出ることはないと思うが、念のため言っておく。神羅に関わる施設が受持区内にあるから、ナイトウォリアーについても警戒してほしい。もっとも、こっちに来ているのは、本社で失敗して左遷された連中だろうがね。」
 と言っていた。
 「今夜あたり、ナイトウォリアーが出そうな気がする。」
 宗村が言うと、高村は返す。
 「まさか。ナイトウォリアーが刀の錆にしなきゃならない連中は、大陸にごろごろいるんだぜ。ここにいるようなのは、あと回しにするだろうさ。」
 二人は知らなかったが、ナイトウォリアーの猛威に恐れをなし、東方共和国の支社に重役の一人が逃げこんでいた。こっそりと入国したので、警察の公安課、司法省出入国管理局を初めとした関係者にも気づかれなかった。
 ただ一人、ナイトウォリアーを除いては。
 東方共和国国内でも、神羅カンパニーは前々から様々な問題を引き起こしていた。その一例が、名目上は守衛だが、武器を携えた、軍隊類似の組織を引きつれていること。共和国内では勝手な真似はさせないと、武器使用は認めていない。第一守衛を多数必要にするようなことをやっているのか…。これだけでも、共和国政府や警察の公安課、軍の対敵諜報部が神経を尖らせるに値する行動だ。
 二人が神羅支社の入ったビルを通りすぎ、支社長宅の前にさしかかったそのとき。叫び声がした。銃声と金属どうしがぶつかる音も。
 「出たぞ、ナイトウォリアーだ。」
 「応戦しろ!」
 共和国の治安を守る存在の警察官としては、理由はどうであれ、人が血を流すのを黙って見ているわけにはいかない。
 「何だって!?」
 「ナイトウォリアーが出たって言っていたな。」


クリックすると拡大されます


 二人が行ってみると、うわさ通り、全身黒のレザースーツで、片刃の剣を背中の鞘に戻している女がいた。
 間違いない。ナイトウォリアーだ。
 目の前には、一撃必殺とはまさにこのこと…としか言えない、見事な剣さばきで斬った、ソルジャーや護衛兵、神羅社員が倒れている。
 「ナイトウォリアーだな。理由はともあれ、ここは東方共和国だ。殺人の現行犯で逮捕する!」
 高村が言うと、ナイトウォリアーはふっと笑い、返す。
 「お前の腕でわたしを斬ることなど、できぬ。それに、幻を逮捕することも。」
 「幻を逮捕することだと…。」
 ナイトウォリアーの謎めいた一言が終わるか終わらないかのうちに、ちょうどおりからの月光が、雲に隠れて暗くなった。周囲に人工の光はなかったので、真っ暗になる。
 雲が晴れて視界が回復したときには、ナイトウォリアーの姿は消えていた。
 「い、いない…!」
 「出たんだ、本当に出たんだ!」
 「なんでまたよりにもよって、ここに出るんだよ…。」
 信じられないが、ナイトウォリアーが出たのは事実。二人は緊急配備の手配をすると共に、まだ息のあるものには応急処置を施し、鑑識課や捜査課が来るまでの現況保存と、初動捜査に忙殺された。

 翌日の新聞各紙には、「ナイトウォリアー、東方共和国に現る」といった見出しの記事が載った。
 事件捜査を捜査課に引き継ぎ、交番勤務を次の当番に申し送った勤務明け。当直の内藤部長に一部始終を報告すると、部長は、言う。
 「ナイトウォリアーは、存在すらつかめない。それを逮捕しろと言うほうが無理な話だ。それに、現行犯逮捕しようとしたら、死傷者が増えるだけだ。」
 検視の結果、死者はまさに「一撃必殺」、急所を狙った一撃で倒されていた。命があったのは、間一髪で急所を反らせることができた、幸運な者だった。

 それから数日後。交番勤務の休憩時間。休憩室の畳の上に大の字になって、高村が、
 「現に死傷者が出ているのに、幻とは…。」
 と言うと、お茶を飲んでいた宗村が返す。
 「神羅は、様々な人々が憎んでいる。その憎悪、怨念そのほか負の感情が実体化したのが、ナイトウォリアーなんじゃないかって気がしてならないんだ、僕としてはね。」
 巷でのうわさでは、ナイトウォリアーは神羅を憎む様々な人々の負の感情が生み出した、一種の怨霊、生霊の類ではないかという。これがまことしやかに信じられる理由は、映像に姿が残らないこと。
 それに、現場に居合わせた二人にとって、「幻を逮捕することなど、できぬ」という一言は、ひっかかるものがある。
「宗村まで怨霊説かい。俺としては、殺人犯を現行犯逮捕できなかったのが悔しいんだ。相手が何であれさ。」
 そのとき交番で見張り勤務だった、守村巡査が次ぐ。
 「ナイトウォリアーの剣さばきは、見てみたかったな。一撃必殺となれば、居合に近いぞ。」
 守村は、居合ができる。
 宗村が、返す。
 「僕らが現場に着いたときには、何もかもが終わっていたんだ。
10人近い人間を相手にしていても、5分かそこらで済ますんだ。相当の腕だね…。」
 警ら中、悲鳴を聞いて現場に向かおうとした二人は、ナイトウォリアーに対する警戒で神羅支社の出入り口は全て施錠されていて、やむなく塀を乗り越えて入った。よって、現場到着まで
5分近くかかっている。
 「気になるのは、現場に遺留品が全くないこと。あれだけの立ち回りを演じているのに、何一つ残していないんだ。」
 ナイトウォリアーが立ち回りを演じたのは、コンクリートの地面だったので、足跡一つ、髪の毛一筋残していない。
 雲をつかむような状況では、名刑事、名探偵といえどもお手上げだ。そのうち捜査は、打ち切りとなった。

 この事件のあと、安全だと思われた東方共和国でナイトウォリアーが現れたというのと、もともと東方共和国政府が神羅カンパニーの行動に様々な制約を加えていたのもあって、神羅カンパニーは東方共和国から撤退した。
 それを機に、ウータイを影に日向に支援していた東方共和国政府は、神羅に対し宣戦を布告。それまで志願兵部隊だったウータイ支援軍は、共和国国防軍の正規部隊になった。
 東方共和国警察は、軍隊的編成の機動隊が野戦憲兵とともに後方地帯の治安維持にあたる一方、反神羅組織の支配地区では、反神羅組織のメンバーを中心に警察を編成する手助けを行うことになり、警察官を派遣している。無論その中には、高村・宗村もいた。
 二人は巡査部長に進級。共和国警察の詰襟式制服の上から、紺色の巻脚絆を巻き、銀色のサーベルに帯革で拳銃を装備して、交番長や警ら課の当直司令として勤務している。
 そこで二人は、ナイトウォリアーそっくりの女性を目の当たりにする。アバランチのティファ・ロックハートだ。
 たまたまその日、警察署の前で立番していた二人の前を通り過ぎたティファ・ロックハートを目にして、高村が言う。
「見たか、宗村。」
「ああ、見たとも。そっくりだ。前髪で片目が隠れていれば、なおさらだ。」
 神羅鉄道総裁の暗殺を目撃した、大同通信社の岡部慶四郎カメラマン、柳田幸司記者の行った、ティファ・ロックハートがナイトウォリアーの正体ではないかというインタビューでは、本人は否定したが、似ているという結論になっている。
「やっぱり僕の言うとおり、ナイトウォリアーは怨霊、生霊、人知を超えた何かなんだ。」
宗村がいうと、高村は返す。
「俺も、生霊説を採りたくなってきたよ…。」

 時は流れ。あの時青年警察官だった高村・宗村の二人も定年を迎え、警部で勇退している。今でも「ナイトウォリアー、神羅東方共和国支社長襲撃事件」の話になると、ナイトウォリアーはティファ・ロックハートが神羅を憎むあまり出した生霊だと、二人は信じて疑わない。