守村義衛警防班長

重垣:「激動の昭和」を彩った制服姿を現代に蘇らせることを目標とする、コスプレ集団・レイヤーズの皆さん。今回は警防班長に扮した、守村義衛さんにおいでいただきました。
守村:現在の消防団でも同等職の、班員をまとめる警防班長の守村です。
重垣:「高村健特別消防員」で、警防団の制度については触れているので、今回は服制について解説する予定です。第二次大戦前の、「再軍備宣言」以降にデザインされた、ドイツのM36野戦服に似ていますね。
守村:警防団の結成が昭和14年、西暦に直すと1939年だから、かっこよさでは世界一の、ドイツ国防軍の軍服や、ナチスの親衛隊、突撃隊を意識したと思われるでしょう。しかし、消防組の昭和5(1930)年制定の制服も、これとほぼ同じデザインです。警防団との違いは、階級章・記章以外は、生地が黒色布で、警察と同じ制帽を被っていたのと、警防団の制服のような立襟式か、開襟にしてネクタイを装備するか、どちらか選択できることです。あと、江戸火消の名残で、半被腹掛の乙種制服があります。予算の乏しい自治体向けで、これは警防団、消防団にも引継がれています。さすがに今は半被のみになりましたが、災害現場などでは警察官や消防官、他の地区から応援に来た消防団員と見分けるため、作業服の上から着ている場合もあります。
重垣:ということは、警防団の制服は消防組のデザインを、ほぼそのまま流用したわけですね。
守村:ええ、そうなります。それに、構成する人員が重なるうえ、任務も似ている、陸軍省所管の民間防空団体の防護団との融和も考えなければならなかったですから、双方のデザインを折衷した…と考えるべきですね。この制服は、戦時中の服制に触れたときに何回も言っているとおり、日中戦争による物資不足で、本来なら羊毛や木綿を使うべき部分には、破れやすいことで悪名高いステープル・ファイバーその他の混紡、革を使う部分には代用皮革、真鍮のボタンは木や陶器、硬質ゴムのエボナイトを「当分の間」使うことが認められた時期です。それに、合併前の消防組と防護団の制服もあるので、それも「当分の間」使うことが認められた時期でもあります。
重垣:本土空襲が激化して、警防団の任務が重要になった時期には、物資不足で制服が支給できず、国民服の左腕に、ありあわせの白布に「警防団」と書いた腕章を巻くほどになりましたからね。
守村:自分が扮する昭和10年式制服の巡査や、宗村が扮する鉄道省の昭和9年式制服、あれは、「日中戦争で羊毛が不足して、手元にあった素材を利用して作った」という設定にして、市販の学生服をそのまま転用しています。民間の場合は、物資が欠乏しているので、平時や軍隊と違って、素材は手に入るものならなんでもありになりますから。
重垣:古めかしい、1920〜30年代のデザインの背広一着と、中折帽子、それに「HG」とありあわせの白布に書いた腕章を巻けば、イギリスのホーム・ガード、「Volksstrum」と書いた腕章を巻けば、ドイツの国民突撃隊のコスプレになりますからね。
守村:両者とも、日本で言えば警防団に国民義勇軍を統合したような組織です。重垣さんも、たとえがマニアックですね。
重垣:いえいえ(苦笑)、みなさんに触発されたんですよ。
守村:双方ともどうにかこうにか、第一次大戦の使い残りの鉄帽は支給できたので、鉄帽と、武器として、個人所有の猟銃か拳銃はほしいですね。ホーム・ガードの場合は銃と同じ長さに切った、ほうきの柄で軍事教練をやりましたから、それでもいいかもしれません。
(とそこへ、清水がやってくる)
清水:ああ、間にあった。高美さんから、守村さんが警防団の解説をしていると聞いたので、急いでやってきました。
守村:おお、清水、間にあったか。いままでお前さんが来るまで、民間防衛の話でつないでいたんだ。今の消防団が直面する状況が、昭和19年から20年の警防団と似たり寄ったりだという話を聞いたんだが。
重垣:えっ、それは本当なんですか。
清水:ええ、事実です。現在の消防団を取り巻く状況は、本土空襲が激化した昭和19年から20年までと似たり寄ったりです。消防団員の高齢化は、当時第一線で警防活動に当たるべき、10代後半から30代前半の団員が軍人として応召するので、徴兵年齢以上の45歳以上しか残らない。サラリーマン団員がほとんどで、休日しか出動できないのは、残った男性も、昼間は徴用そのほかで軍需工場へ行ってしまうのとまったく同じです。よって、女性消防団員の増員、かつての学徒報国隊のように、大学生に入団を勧誘する、隣組防火網のように自主防災組織や防災ボランティアを編成する…という対策を立てています。
重垣:ところで、清水さんの卒論では、同時多発で火災が発生する、落橋、家屋倒壊などで本来のルートでは進めない、消火栓や水利が使えない…など、空襲火災と震災が似ているから、警視庁消防部が立てた空襲対策と比較して論じたと聞きましたが、結論はどうなんですか?今回は人員確保について触れていますから、それについてお願いします。
清水:かつての隣組防火網の復活に相当する、防災ボランティアを中心にした自主防災組織の再編成と、女性消防団員の増員、学徒報国隊に相当する、大学生・高専生への入団勧誘が第一だというのが結論になりました。被災地では、消防団員が防災ボランティアとともに一般市民を指揮し、消防、警察、自衛隊など救援が来るまで、応急処置と初期消火に当たり、自分の町内を守ってほしいというのが本音です。
守村:うーん、学徒報国隊か。つけ加えるなら、空襲時には防空補助員として旧制中等学校の学徒を警防団の補助に使ったように、高校生と、警防団とは別個に、職域ごとに編成した特設防護団のように、職場単位で防災ボランティアを編成して、救援活動に従事させるのも一つの手かもしれんな。帰宅困難者対策にもなる。
清水:さすがは守村さん。犬飼先輩も気づきませんでしたよ、今のアイデア…。
守村:うーん、思いつきを言っただけなんだが…。
重垣:いやあ、制服の話から来るべき震災時の対応、清水さんの卒論の内容まで、話が展開していきましたね。しかし、時間が来てしまいました。
守村:では、重垣さん、締めのセリフを。
重垣:このイラストは、管理人がOMCを通じ、クリエータのほしなかえるさんに描いていただいた作品です。無断転載、無断引用は、お断りします。