トラフィック戦隊・アンゼンジャー外伝
ハシリーヤ対レイヤーズ
〜昭和名曲大全集〜


 「上野駅前の坂下交番を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた昭和31年の同名映画の主題歌、作詞井田誠一、作・編曲利根一郎、歌曽根史郎の昭和の名曲、「若いお巡りさん」!」
 ナレーションと同時に、舞台袖から高村が登場する。

もしもしベンチでささやくお二人さん
早くお帰り夜がふける
野暮な説教するんじゃないが 
ここらは近ごろ物騒だ
話の続きは 明日にしたら
そろそろ広場の灯も消える



 ハシリーヤはわめく。
 「なんだ、この力の抜けるようなテンポの歌は。しかも今のナレーションは演歌の司会者か!?」
 それにはお構いなしで、高村は、『刑事コロンボ』のピーター・フォークを思わせるしぐさで、制服の左胸ポケットから取り出した警察手帳のページを繰り、言う。
 「ええと、ハシリーヤ将軍はあんたですね。ええとあなたは……、昭和
3333日、スバル360の公開が行われた日、芝公園近辺で暴走。それから…、カッパ橋通りで都電と衝突、そのまま逃走…その前は…ああ、東京モーターショーに乱入しようともしていましたね。」
 いくら世界の交通秩序を乱すことを目標とする
M.U.Dの首領でも、昭和33年には暴走していないから、ハシリーヤも身に覚えのない容疑に驚く。
 「しょうわさんじゅうさんねん!?そんな昔に俺は生まれてないぞ。何かの間違いじゃあないか!?」
 すると、「その他の危険」、「止まれ」、「停駐車禁止」のイーハンズの面々と、レディ・ピラニア、大虎仮面は騒ぎ出す。
 「そ、そんな昔から将軍は暴走してたんですか!?」
 「その他の危険」が言うと、レディ・ピラニアの緊張感のない声が次ぐ。
 「え〜、将軍って若く見えてもおじさんだったんだ〜。」
 「止まれ」が言う。
 「三輪車に乗って、子供のころから暴走してたんじゃあないですか?」
 「いや、乳母車かもしれないぞ。」
 「停駐車禁止」の言葉に、大虎仮面は遠い目で次ぐ。
 「そのころおいらは、ミルクより酒を飲んで育っていたな…。」
 シグナイエローは、半ば呆れる。
 「小さいころから悪ガキで 
15で不良と呼ばれたよ」を地で行くわね。」
 シグナレッドが次ぐ。
 「そうそう。ハシリーヤはヘルメット脱いだら、つるつる頭だったりして。」
 敵はともかく、部下にまで好き勝手な事を言われて、ついにハシリーヤは怒り出した。
 「だからそんな年じゃあねえっての!それにどうやって乳母車で暴走するんだよ。」
 「だったら将軍こそ、ヘルメット、脱いでみなさいよ。」
 「なにぃ。そっちこそ脱いでみろ!!」
 「何ですって!?」
 しばらくシグナレィディと将軍の間で低レベルのやりとりが繰り広げられたあとで、高村が決定打を放つ。
 「否定されますが、将軍、昭和
33年に暴走しているあなたを見た人がいます。」
 「あゝ上野駅」とともに、宗村が荷台に荷物を載せた自転車に乗り、客席から登場する。
 「上野駅
18番線ホームはなくなっても歌は残った。集団就職で慣れない都会へやって来た少年少女を勇気づけた昭和の名曲、作詞関口義明、作・編曲荒井英一、歌井沢八郎の「あゝ上野駅」!」

どこかに故郷の 香りを乗せて
入る列車の 懐かしさ
上野はおいらの 心の駅だ
くじけちゃならない 人生が 
あの日ここから 始まった


 宗村は自転車を止め、ステージに上がり、言う。
 「あっ、お前はあの時の黒ずくめの男だな。僕が自転車に乗ってカッパ橋通りの菊屋橋近くを走っていたときに、石を跳ね飛ばしてそのまま走っていったのを覚えているぞ。「配達帰りの自転車を 止めて見ていたカッパ橋」で、僕は見たんだ!」
 ブルー・ユニッツのタカミは、一言。
 「あんたたちは趣味が渋いというか…、なんというかねえ。「小さいころから悪ガキで」はわかる人も多いだろうけど、「配達帰りの自転車を 止めて見ていたカッパ橋」は、わかる人にしかわからないじゃあないの、ねえ」
 ステージに同意を求めると、周囲の人々はうなずく。「ギザギザハートの子守唄」はともかく、「若いお巡りさん」と「あゝ上野駅」がわかる人は、そうはいないだろう。
 ブルー・ユニッツのユーコが続ける。
 「昭和名曲大全集状態ね。」
 シグナブルーが言う。
 「あたしもさっぱり、わからないわよ。」
 高村は、逮捕令状、捜査令状、押収令状をつきつける。
 「それはともかく、ハシリーヤ将軍には、道路交通法違反の容疑で逮捕状が出ています。」
 本物である事を確認し、タカミが言う。
 「将軍、ここはいさぎよく観念することね。」
 ハシリーヤは、青ざめる。
 「観念しろって言ったって、俺は昭和
33年に暴走はしてないし、そんな昔に生まれてもいないぞ。おーい、大安全マーン、みんなして俺を無実の罪に陥れようとしているぞ、助けてくれ〜!」
 すると、これまた場違いの、下座のお囃子が流れる。
 「…なぜ、寄席もないのに下座のお囃子が?」
 宗村が言うと、落語好きの熱川が次ぐ。
 「残しておきたい江戸情緒 下座のお囃子、寄席のぼり」なんてナレーションが入りそうだねえ。」
 「こんどはお正月の音楽か!?」
 ハシリーヤが言うと、ユーコが訂正する。
 「将軍は「お正月の音楽」といって琴の名曲、「春の海」と混同しているけど、これは、寄席で興行をはじめるときに合図として、二つ目や前座が演奏する寄席のお囃子よ。」
 ミスを指摘された将軍は、慌ててごまかす。
 「そうだ、だから俺らは「お笑いショー」なんて言われるんだ、おのれ大安全マン、お前の登場音楽のせいで…。」
 レイヤーズとブルーユニッツが時間稼ぎをしている隙に変身したアンゼンジャーは、所定の位置まで移動している。
 ヒーローらしいポーズをとって、アンゼンジャーは、
 「風誘う 悪を倒せと 我を呼ぶ……日ごろの行いが悪いから、あらぬ疑いをかけられるんだ。将軍、これにこりたら少しは行いを慎むよう!それにわたしの登場音楽とショーの内容は、関係ない。とうっ!」
 といってジャンプし、ステージに下りる。
 あとは、いつもの立ち回りだ。