白昼夢社会人編〜トンデモ設定〜

白昼夢
社会人編
〜トンデモ設定〜

以下の文章は、とあるネットゲームの設定を見た、宗村夏実が書いたものである。


防犯パトロール中の宗村・高村班から連絡が入ってきた。
「こちら高村・宗村班。現在刑事を自称する女性と遭遇。身元確認願います。本人はニシムラ・ミリ、勤務部署は広域捜査課と自称………。当方を偽者と称しています。」
本部にいたあたしと悠子さん、高美さん、川崎警部補は顔を見合わせた。
「刑事を自称…?」
あたしは返す。
「刑事を自称って…?手帳は持っているの、持っているならそれにIDナンバーがあるはずよ。」
警察手帳にはナンバーが振ってあるから、それで調べれば本物か、偽物かわかる。
「ともかくあたしたちが行くから、現場を動かないで。」
「承知。」
高村・宗村コンビが連絡をした地点に行くと、昭和10年式巡査制服姿の二人が、10代の少女を前にして立っていた。
「10代で私服刑事だなんて、信じろというほうが無理ですよ。」
高村が言うと、宗村が次ぐ。
「普通、私服刑事は地域課で十数年勤務しないと勤まらない部門ですからね。」
少女も負けていない。
「そっちこそ銃刀法と軽犯罪法に引っかかるわよ。」
高村が返す。
「こちらが刀を抜いて斬りかかってきてもいないのに、逮捕するといって拳銃をちらつかせた。拳銃を使わなければならないのはいよいよ危ないときだ。警察官職務執行法をご存知ですか…?」
川崎警部補が言う。
「怪しむのももっともでしょうが、二人は地区防犯パトロール隊の隊員です。詳しい話は交番で聞きましょうか。」

交番で聞いた、高村・宗村コンビとニシムラ・ミリの話を総合すると、以下のとおりになる。
防犯パトロール中の高村・宗村コンビが警ら箱のある郵便局近くにやってくると、ニシムラ・ミリにでくわした。彼女は、
「そこのふたり、なにやっているの、夜間徘徊で逮捕しちゃうぞ」
といって、拳銃を突きつけてきた。身の危険を感じた二人は、佩刀をいつでも抜けるようにしつつ、
「我々は学生ではありません、地区防犯パトロール隊の隊員です。」
と、警察署長の公印のある身分証を見せたが相手は信用しないので、高村が、
「そちらこそ、いったい何者なのですか。」
というと、彼女は返す。
「あたしは広域捜査課の、ニシムラ・ミリ巡査よ。」
もちろんそんな部門は聞いたことがないから、二人は手帳を偽物と疑い、「刑事を自称」と言ったのだ。

交番で事情を聞き終えてから、あたしが言った。
「あなたが本物の警察官だということはわかったけど、信じろというほうがまず無理ね。」
彼女の警察手帳は本物だった。最近できた広域捜査課所属だそうだ。
高美さんが次ぐ。
「…私服に制帽なんてちぐはくなかっこうして、いいと思っているの。着装規定に違反しているわ。」

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どちらが本物に見える? 1一応本職の警察官。2、3、4は制服姿で防犯活動に協力する民間人。
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彼女の姿は私服のノースリーブにミニスカート。それでいて制帽をかぶり、警棒はのばしてベルトに挟み、拳銃は隠して装備している。
川崎警部補が次ぐ。
「正直なところ、一世代前の制服姿の鳴海さんや犬飼さん、詰襟式制服の宗村さんや高村さんのほうが本物に見えますね。」
確かに、宗村・高村コンビが着ている詰襟服は昭和10年、悠子さんや高美さんが着ているのは一世代前の、あたしが着たくてあこがれていた、制服好きには「旧制服」で通じる、昭和51年制定のデザインだが、自分たちも防犯に携わっているのだ…という責任感が伝わってきて、本物に見せる風格を持っている。
美冬が言う。
「ムネさんと高村君が斬りかかってきたならともかく、何もしていないのに拳銃を突きつけたなんて、問題になるわよ。聞けば、あなたは深夜徘徊の高校生に拳銃を突きつけて、家出人に手錠をかけたんですって。あなたも警察官職務執行法は教わっているはずよね。知らないなんて言わせないわよ。」
深夜徘徊の高校生に拳銃を突きつけ、家出人に拳銃をかけてよいという話は聞いたことがない。問題にならないほうがおかしい。
大塚さんが、肩をすくめる。
「……俺もヘマはよくやるが、君が起したトラブルは…、懲戒免職にならないのが奇跡だとしか言いようがないね。ムネさんと高村が刀に手をかけたのは、そっちが拳銃を出したからだし。」
あたしは、ため息をついて次ぐ。
「相当の、トラブルメーカーらしいわね。」
防犯パトロール隊を結成したとき、レイヤーズ・メンバーといった巡回にあたる人たちは、警察法、警察官職務執行法など法律の講習も受けている。下手をすると拳銃操法以外では、民間人のレイヤーズのほうが、ニシムラ・ミリより勝っているのではないだろうか。警察官になったほうがはるかに活躍できるあずさや衛恵さん、内藤さんを落として、なんでこんな問題だらけの人間を採用したのだろうか……。
しばらくすると彼女の上司がやってきた。引き取る前に川崎警部補と二人だけで話をしていたが、彼女には相当苦労をしているようだ。

こんな話を書いたのは、とあるネットゲームのキャラを知ったから。10代で私服刑事になっているうえ、夜間徘徊の少年に拳銃を向けるなど、実際にやったら騒ぎになりかねないようなことが平気で書いてあるから、それをからかってやろうと思い、身近な人をモデルにして、風刺してみた。
「こういうトンデモ設定が多すぎて、いやになってくるわ。どこの世の中に、10代で私服刑事になるなんて話があるのよ。未成年だから単独での権力行使はできないから、内勤に回るはずなのに………。」
あたしがいうと、美冬が次ぐ。
「ほんとほんと。刑事を出すならきちんと下調べをしてからにしてほしいわね。方面本部か本庁に捜査本部ができるならともかく、広域捜査署ですって…?こんなセクションまずできないわね。」