白昼夢
社会人編
〜今日も鉄道は、動いている〜
小雪の舞い散るホームに、宗村高光は、国鉄の、紺ラシャ、金色4つボタン開襟式の制服姿で、立っていた。国鉄型車両で、運転士、客扱専務車掌、車掌なども国鉄の制服姿で走らせる、リバイバル・トレインの入線待ちのためである。
17番線ホームに入るのは、「あゝ上野駅」号。昭和20年代後半から40年代にかけて、「金の玉子」と呼ばれた、北海道、東北、北陸の中学、高校を出た、慣れない都会への期待と不安を抱いた少年少女を乗せ、3月に続々、上野駅18番線ホームに入線した就職列車を復活させたもので、昭和39年にヒットした、井沢八郎の同名の歌を列車の名前に使っている。
就職列車を迎えた上野駅18番線ホームで、「金の玉子」を「○○中学校、○○高校の皆さん、長旅ご苦労様でした……」と構内放送をかけた駅構内勤務者が着ていたのが、紺色ラシャ、4つボタン開襟式の制服になる。
柱の構内電話が鳴った。本物の就職列車を向かえた乙松助役からだ。
「上り18K、機関車付替の関係で3分遅延。」
「承知。」
実際に走った就職列車と同じく、未電化区間は国鉄蒸気機関車の代名詞D51とディーゼル機関車DD51が牽引し、電化区間では交直流対応の電機ED80が引き継ぐ。電車と違い、機関車は長期間の運用ができないので、途中で機関車を付け替える。
入線予定は午後3時。隣りの山の手線、京浜東北線のホームには、これから盛り場へ繰り出すカップルが見える。
18番線ホームも、駅前の都電もなくなり、日本国有鉄道は東日本旅客鉄道株式会社、帝都高速度交通営団は東京地下鉄と名前を変えた上野駅に、「あゝ上野駅」号は入線する。
制帽のあごひもをかけなおし、彼はつぶやく。
「3月14日、今日も鉄道は、動いている。」