白昼夢大学院編ある日のコスプレデート〜夏コミ編〜

白昼夢
大学院編
ある日のコスプレデート
〜夏コミ編〜


日本…いや、世界最大の同人イベント、夏冬のコミックマーケットには、あたしたちコスプレ集団・レイヤーズも参加している。今回、あたしとムネさんは、高美会長から別働隊として行動するよう指令があった…というのは冗談だが、レイヤーズ本隊とは別れ、二人で動くことになった。
鉄道員と警備員という、お互い休日が暦通りにならない職業に内定したから、今のうちにコスプレ・デートできるよう、高美先輩が計らってくれたわけでもある。

予め打合わせておいた時間の、臨海線直通埼京線の先頭車両。サンドイエローの半袖開襟シャツに同じ色のズボン、肩には雑嚢を斜めにかけ、古めかしい丸レンズの眼鏡をかけ、白い登山帽を被り、足元に黒のスポーツバッグを置いた男が、ムネさんだ。
「どこの現場の人かと思ったわよ。」
あたしが言うと、ムネさんは返す。
「同じ色の作業シャツに、ズボン、それに安全靴だからね。そう見えても、しょうがないか。」
かくいうあたしは、日焼け対策で白の長袖ブラウスを羽織り、青のキャミソールにジーンズ地のキュロットスカート、ハーフサイズの黒ブーツ。それに野球帽(チーム名などのロゴはなし)。足元には大きなバッグ。ムネさんは交通誘導警備の現場に向かう警備員か、現場へ向かう技術者、あたしは旅行者…といったところだろうか。
さりげなく車内を見回すと、漫画の中でも風刺で描かれる、見るからにオタクでございといった外見の連中はもちろん、渋谷や新宿、お台場にいてもおかしくない、「隠れ同人」らしい人もいる。あたしたちの隣りにいる男女ペアもそれで、衣服はかっこいいが、話題は同人的。足元にはスーツケースがある。レイヤーだろうか。
「あの二人も、レイヤーのようね。」
あたしが言うと、ムネさんは返す。
「僕もそう見ている。なんのコスかはわからないけどね。」
列車は池袋、新宿、渋谷…と進んでくるにつれて、お台場へ向かうかスタンプラリー中の親子連れやカップルが乗ってきて、異様な集団を見て一瞬とまどう。それを押し込むように、印刷会社のロゴの入った段ボールを載せたカートを引いた同人女や、冷静になれば持てないイラストの描かれた紙袋を持った男も乗ってくる。
「あの親子連れ、災難ね。」
あたしが言うと、ムネさんが次ぐ。
「僕らは、堅気の人に迷惑かけちゃあ、いけないよ。」
…このセリフ、守村君や高美先輩が言うと、別の意味にもとれる。思わずくすっと笑ってしまった。

そんなこんなで、列車は国際展示場についた。
国際展示場駅につくまでは、あたしたちは堅気のふりをしていた。ここからは多少それらしい行動をとってもいいが、節度だけは守らなければならない。
駅の広告は、新連載開始や新作放映開始の漫画やアニメ、新作ゲームのものばかり。いつもながら呆れてしまう。有明のガン研究所病院へは、カウンセリングの研修で行くので、ふだんの国際展示場駅も知っているから、なおさらだ。
会場入りは午前
11時。下手に早くつくと、入場制限に引っかかって、長い時間炎天下で行列しなければならない。
「行列は、かなりはけているようだね。」
ムネさんが言った。時間の読みはあたったわけだ。

コスプレするあたしたちは、一旦更衣室に入る。今回あたしは、昭和
20年代〜30年代前半の婦人警察官夏服姿になる。サンドイエローの舟型略帽に、同じ色の長袖肩章つき開襟シャツとセンタープリーツのタイトスカートだ。さすがに警察記章をつけると問題なので、外しておいた。
「アベック・パトロール」として、盛り場を男女ペアで警らした時代のもの。ムネさんとペアを組むため、これにした。
着替え終えて、待ちあわせスペースで待っていると、ムネさんがやってきた。
ムネさんも、サンドイエローの長袖肩章つき開襟シャツ、同じ色のズボンに制帽、黒の脚絆に帯革だ。


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「消防官に間違われない?」
あたしが言うと、ムネさんは返す。
「区別してもらうため、帯革を巻いて、その上から
26年式の帯革装備して、雑嚢とペットボトルホルダー吊っているから、軍装に見えるんじゃあないかな?」
近年モデルチェンジが行われて、警察と同じく水色半袖シャツに紺色ズボンも使えるようになった消防官の夏服だが、東京消防庁は、警察・消防合同時代の昭和
21年に採用された、カーキ色の開襟シャツに同じ色のズボンのデザインをつづけている。もっとも、これを着るのは本庁の通信隊や、防火査察にあたる警防課といった管理部門で、消火・救助活動にあたる消防署勤務者は青かオレンジの作業服、救急隊は背広を模したデザインの制服姿だ。
「さ、時空を越えて現代によみがえった、アベック・パトロール、出発よ。」
「了解。」
まずは、今回売り子として応援出動中の高美先輩がいる、官庁系制服主体のサークル、「ブルーユニッツ」と、かおる・頼子コンビのペットサークル、「箱入にゃんこ」がいる東館へ向かう。
隣りを歩くムネさんに、言う。
「いつもながら、すごい混雑よね。」
ムネさんは、目の前の男が持っている、冷静になれば周囲の目線で持って歩けないような文句の書かれた紙袋に目をやり、返す。
「三日目は男性向け創作…エロ同人の日だからな。正直なところ、このジャンルのせいで、作品やキャラを心から愛するサークルや、好きなものを描いている人、単行本にできるレベルのものがある
1日目、2日目の存在をかき消しているような気がする。」
…マスコミの夏冬コミケの扱いは、ステロタイプ化された「オタク」と、エロ同人、一知半解の知識で色物視するのはまだましで、ひどいときには男性向け創作でときおり見られる、性犯罪、性暴力としかいえない目に女性が遭わされている内容の
18禁同人誌を、実際に起こった犯罪に短絡する。コスプレだってそうだ。レイヤー向けでもない限り、雑誌はゲームやアニメなどの、露出度の高いキャラを取りあげる程度だし、軍装レイヤーを一知半解の知識で非難する連中もいる。往年の特撮ヒーロー、ヒロインの姿や、話題の人物やコマーシャルに扮する人もいるし、あたしたちのような、時代考証をし、「激動の昭和」の姿を現代によみがえらせる、鉄道などの硬派の職業制服もいるのに、それは二の次だ。
「特撮ヒーローや、話題のコマーシャルといった、一風変わったコスプレもあるのにね。」
あたしが言うと、ムネさんは返す。
「先入観や誤解を消していくのがレイヤーズの任務だって、高美先輩も言っていたっけね。…あ!」
「どうしたのよ、いきなり大声上げて。」
あたしが言うと、ムネさんは返す。
「コスカで『コミケ、猫の本でスペース取れますね』って言った人が、本当にしているんだよ!」
「本当!?」
あの人は、見覚えがある。制服主体の同人誌即売会にしてコスプレイベントのコスチューム・カフェで会ったことのある人だ。制服物のついでに猫の本を出したら、ジャンル違いのそっちのほうが売れ行きがいいので、どうしたものかと悩んでいたっけ…。
「何気なく言ったことが、本当になるなんて…!」
ムネさんが言うと、売り子さんは返す。
「ええ、本当になりましたよ。」
サバトラといわれる毛並みの猫二匹の写真集。かわいいので思わず全部買ってしまった。
「いやあ…。驚きだなあ。」
ムネさんが言うと、あたしは返す。
「あたしだって、びっくりしたわよ。あ、猫って米ぬかや大根の葉っぱまで食べるんだ。知らなかった。」
「悠子にムネさん〜。」
話に夢中になって、かおる・頼子コンビのサークル、危うく行き過ぎるところだった。二人も相変わらず、マイペースで行動している。
さっきの写真集の猫ちゃんは、米ぬかや大根の葉っぱを食べるので、その話をすると、二人は、
「猫ちゃんは肉食ですから、消化できるかどうかわかりませんねえ…。」
「かおるの家のにゃんこは、おからを食べるわ。」
と、返してきた。結局、猫が好んで大根の葉っぱや米ぬかを食べるかどうかは、わからずじまいだった。

お目当ての、『三丁目の夕日』のサークルさんを発見し、そこでしばらく話し込んだあとで(もちろん、同名のコスプレ写真集をさりげなく
PRし)、こんどはブルーユニッツのところへ。
「悠子、ムネさん!」
高美先輩は、水色の半袖シャツ袖まくりに、紺色タイトスカートで、辻本夏実に扮している。コミケの規定で、交通腕章や、階級章は省略している。あたしとムネさんは時効だが、原作版、アニメ版の『逮捕しちゃうぞ』は着くずさないとだめなのだ。
ブルーユニッツの代表、京須飛車さんがいう。
「昭和
20年代の夏服ですね。拳銃は米軍払い下げが来るまでのつなぎの26年式ですか。」
「おお、わかりますか!
14年式にしようかとも思ったんですがね。」
京須飛車さんはこの道一筋何十年の人だから、男女ともに警察官制服の変遷はわかる。
あたしが、
「アベック・パトロール復活です。」
というと、京須さんは次ぐ。
「この姿で、江戸東京たてもの園でロケハン、したいですね。」
高美先輩が次ぐ。
「他の面々もコスプレ・コーナーにいるからさ、そっちにも行ってみてよ。」

コスプレコーナーへ行く途中、喫茶スペースで休憩しながら、コスプレイヤーの身分証「ちぇんじ」の注意事項を読む。
「警察官、消防官、自衛官、海上保安官は法律で引っかかるからあたりまえだけど、警備服、東京ガス、東京電力といった公益事業も不可なんだ。」
あたしが言うと、ムネさんは返す。
「うーむ、警備服は視覚的威圧感を狙って警察と似たデザインにするからともかく、関配や関電工は
OKなのかな?それに、電電公社も。」
「関配、関電工はだめなんじゃあないの、立ち入り禁止区域にも入っていく職業だからさ。電電公社は時効かもしれないけど。」
関配、関電工ともども、東京ガス、東京電力の関連企業。読んで字の如く、ガス配管と電力配線の会社だ。
「『逮捕しちゃうぞ』のサークルさんは、機動隊の出動服風の着こなしだったし、警防団はありなのかねえ?高村あたり、紺色刺し子布時代の防炎服、やりそうだぜ。」
言われてみると、『逮捕しちゃうぞ』のサークルの人は機動隊の出動服風の着こなしをしていたし、海上自衛官と区別のつきにくい、アメリカの海軍軍人に扮した人もいる。警防団はカーキ色だから大丈夫だろう。それに、今のあたしたち。この姿が警察官だとわかるのは、相当のマニアか、リアルタイムで見た人だけだろう。
「このへんは、グレーゾーンよね。ところでムネさん、アンケートになんて書いた?」
「更衣室利用者向けアンケート」と題されたアンケート用紙には、
今日着るコスプレ衣装は自作ですか?店売りですか?
という質問があり、回答は複数可能で、

自作、借り物、店売り、オークションで購入、その他

が用意されていた。あたしたちの衣装は、60年近くたっているうえ、官給品なので、返納しなければならないものもある。物資欠乏の時期だったので、再利用したりで残っている数も少ないし、夏服は汗をかくので洗濯する頻度が高く、すぐに傷んでしまう。現存するものは貴重品だ。
今日着ているのは、年次や形式は微妙に違うものや、それっぽいデザインの作業服などを流用するか、仕立てなおしたものだ。
なんと書くか迷ったが、「店売り」と「自作」に丸をつけた。
ムネさんも同じだ。
「『逮捕しちゃうぞ』のレイヤーさんでは、自作した人もいるけどねえ。」
本物志向のレイヤーズは、警備服を仕立て直したりするが、友好レイヤーのレディさんは、アニメ版辻本夏実に扮したとき、スカート、ブラウスともども自作したとか…。さすがにあたしにはできない。
ふとあたりを見回すと、今回の雑踏警戒は、警備員のみだ。年によっては本物の消防官、警察官が立哨している数のほうが多いときもあるが、今回はときおり警らしている姿を見るだけだ。
あたしがきょろきょろしているのを見て、ムネさんが言う。
「仕事上、気になるのかい?」
「いや、そうじゃあないんだけど、東ホール、西ホールで雑踏警戒の会社が違うし、外の交通誘導も違っていたからさ。」
「言われてみると、そうだねえ。」
外の交通誘導は、
3社、中の雑踏警戒は2社でやっている。1社ではカバーできないから、子会社から引っぱっているのか、下請けに出しているのか…?気になるところである。
そのうちの
1社が、昭和51年式と同じデザインの、ド・ゴール帽式の制帽を女性用で使っているから、平成6年の警察制服のモデルチェンジがマイナーチェンジレベルだったら、ド・ゴール帽に水色長袖シャツ、タイトスカートなんてデザインもあったかもしれないな…などと考えながらコスプレコーナーに移動していると、本物の婦警さんに会った。ぱっと見、昭和51年式を着たこともある世代だろうが、活動帽にズボン姿なので、がっかりしていると、同感だったらしいムネさんが言った。
「夏実・美幸コンビに扮したら、面白いのにな。」
「粋な計らいと思われるかもしれないけど、本当はあの二人、着装規定に違反しているのよね。」
屋外で無帽でいること、ワイシャツの袖まくり、ふたり以上で行動するときにまちまちの姿でいること、いずれも禁止事項だ。これは東都保安も同じ。だからコミケでも夏実・美幸と両津勘吉は
OKになっているのだ。だが、レイヤーだと思ったら本物だったなんて展開は、面白いかもしれない。それこそ『逮捕しちゃうぞ』のようなアクションシーンが展開されるだろう。

そんなこんなで、西ホールについた。今日は快晴、太陽は照りつけるし、コンクリートだから照り返しの輻射熱で暑い。絶好の撮影日和なんてさわぎではない。
しかしそんな中でも、さまざまなジャンルのコスプレイヤーと、一般参加者、それに、カメコと呼ばれるカメラ小僧…という年令でもない人もいるが…がいて、全身をすっぽり覆う着ぐるみや、特撮のヒーローに扮している人もいる。
汗だくだくで撮影に応じている、初代の仮面ライダーがいたので、ムネさんの袖を引っ張ると、ムネさんは言う。
「こっちは平成版だね。変身前だから、暑さはなんぼかましだろうね。」
なるほど、変身前ならさほど暑くはない。あたりを見回すと、涼しげな夏服姿や露出度の高い、ゲームやアニメ・漫画のヒーロー・ヒロインにキャラに扮している人もいる。
「来年の夏は、ひさしぶりにティファ・ロックハートやろうかな、ティファニーとあわせてさ。」
「日焼け対策立てておかないと、大変なことになるよ。」
「そうよね。」
ティファ・ロックハートはミニスカートにハーフトップだから、日焼け対策を立てないと、大変なことになる。
あたしたちは、撮影したり、それに応じたり。そのつど自衛隊の前身の警察予備隊や保安隊、あたしはそれに加えスチュワーデスに間違われたりで、説明するだけで大変だった。
気になったコスプレでは、お酒のコマーシャルや、日清戦争のころの白い夏服、第
1次大戦でアフリカや中近東で作戦した、『アラビアのロレンス』の敵役、ドイツ帝国軍の将校殿に出会った。韓国軍のMPさんにも。
韓国軍の憲兵殿は、
「脱走兵が日本へ逃げたという情報が入ったので、捜査中です。」
なんていって、笑っていたっけ。
この暑いのに、よりにもよって明治
19年制定の「肋骨服」の異名のある、黒ラシャの冬服や、アルゲマイネSSの黒服もいたのには、恐れ入った。
郵政省の緑の制服姿の人もいた。二、三言葉を交わせたので、ムネさんは、
「逓信省で来年出ようか。」
なんて言いだしたので、あたしは次ぐ。
「なら、あたしは逓信省の女子職員かな。」
警察官という設定で話が進む、平成版仮面ライダーなどのレイヤーさんとも撮影したが、ムネさんやあたしのほうが、かっこいいヒーローに扮した人より目立っているように見えたのは、あたしだけだろうか。仮面ライダーは架空だが、あたしたちは、「激動の昭和」を彩った、戦後復興期の制服姿。存在感が違う。
いいかげん暑さでくらくらしかけてきたころ、聞きなれた声がした。
「おーい、ムネさん、悠子さん!」
カメラ片手に手を振る、レイヤーズのカメラマン、岡部慶四郎報道班員に、
RPGのヒーロー・ヒロインに扮した熱川、清水、守谷姉妹、それにカーキ色の略帽に白い半袖シャツ、カーキのズボンの守村君、もんぺ姿の森川あずさ、白色の詰襟制服の高村君。特撮ヒロインのボディースーツは、サンディさんと近藤さんだ。
共通項はほとんどない。しかし、これがレイヤーズ。ジャンル違いでも一致団結しているのだ。
「探したぜ、高美さんから二人が向かったという連絡をもらったきりで、いつまでたっても来ないから、どうしたのかって。」
詰襟制服の高村君は、昭和
10年制定の警察官夏服で、真っ白の盛夏服だ。


参考 昭和10年制定、警察官盛夏服
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「話どおり、アベック・パトロールの時期か。わしは地で演じられる、閑間重松じゃ。」
守村君は広島出身だから、『黒い雨』の閑間重松を地で演じられるわけだ。白い半袖シャツの胸元には「閑間重松」とかかれた名札が縫いつけてある。
あずさの名札は、重松の妻の「閑間シゲ子」になっている。
「あたしは、年令からすると女子挺身隊かな。コスプレ上は夫婦になっているけどね。」
これに、守村君は一瞬、赤くなる。「守村あずさ」になったときを思い浮かべたのだろう。
「これでリュックサック背負ったら、買出し部隊ね。」
あたしが言うと、守村君は返す。
「わしとあずささんと高村は、『多甚古村』と『黒い雨』で、井伏鱒二作品の『合わせ』となるのかのう。ムネさんは昭和
21年制定の警察官夏服じゃから、『本日休診』じゃあ。」
「渋い作品で、レイヤーズらしいわ。アッキー、フッキーたちは?」


左より、ジュン・エーコ、ハーロウ、エフスキー
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上半身は、胸に心臓を守る防具をつけた以外には、腕にしか防具をつけていない、赤銅色に焼けた肌の熱川君が返す。
「鍛えた体も防具の一つ、傭兵隊長ハーロウ・アイゼンハートたぁ俺のこと。死にたいやつだけかかって来い!」
白銀の鎧を身にまとった、清水君が次ぐ。
「全ては忠誠を誓った女帝を守るため。騎士隊長エフスキー・ラズーム、いざ、参る。」
RPGの典型的(?)女戦士姿、命に関わる部分はきっちりガードしているが、露出度の高い鎧に緋色のマントの衛子がいう。
「父母の仇と自分より強い相手を探す、さすらいの剣士エーコ・ガーディアン、父母の仇、今こそ討つ!」
道着をベースにデザインした衣装の、格闘家のジュンがしめる。
「あんた、あたしより強いのかい…?だったらかかって来な!さすらいの格闘家、ジュン・ガーディアン、いざ勝負!」
それぞれ決めポーズでタンカを切った雄姿を、ムネさんはカメラに収めている。
「今回、あたしらは友好サークルの売り子で応援出動してるからねえ…。」

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レッドのボディースーツ姿のサンディさんが言うと、ブルーのボディースーツ姿の衛恵さんが次ぐ。
「あたしたちは、オリジナル特撮のヒロインなんだ。」
今日は、あたしとムネさん以外は、友好サークルの応援に出ている。熱川君、清水君、ジュンと衛子の姉妹は、オリジナルのファンタジー小説、サンディさんと衛恵さんはオリジナルの特撮、守村君とあずさ、高村君は井伏鱒二作品を扱った文芸サークルだ。

しばらくここで、レイヤーズの面々や、なじみのレイヤーさん、カメラさんに会ったり探したりしているうちに、更衣室が閉鎖になる時間になったので、それぞれもとの姿に戻る。
ここで鳴海別働隊は、一旦犬飼隊に合流する。

ビッグサイト前の広場で集合し、国際展示場駅方面を見ると、臨海線、ゆりかもめともども大混雑で入場制限がかけられている。
高美先輩が言う。
「お金がかかるけど、
TFTビルでコスプレイベントやっているから、そこで時間つぶして、混雑をやり過ごしたほうが得策ね。」
それもそうだとみんな納得したので、
TFTビルでやっているコスイベント「隣りでコスプレ博」へ行ってみる。
ここは室内メインなので、涼しい。しかもコミケでは禁止されている長物や武器なども持ち込めるので、あたしたちも予め用意した長物やアイテムを装備し、撮影に応じた。アッキー、フッキー、ジュン、エーコの四人は、武器を構えた姿のほうが絵になった。
しかし、床で座り込んだり、長時間カメラ小僧が粘っていたりで、混雑している。
中では歴代アニメの主題歌をがんがんかけた、コスプレダンパをやっている。
ふたりして浜風に当りながら、ムネさんが、
「僕らの制服の時代の歌は、まずもって流れないだろうね。それに、僕はああいう雰囲気、苦手なんだ。」
といったので、あたしは返す。
「流れたら大変よ…あ、『三丁目の夕日』はアニメになっていたわね、あれの主題歌なら、
OKかな?『地下鉄までの 坂道ゆらゆら…』って。」
「あの人たちののりなら、一番だけでも流してもらえたらありがたいって感じだね…。」
こんな会話をしていると、会場警備の警備員のおばちゃんが話しかけてきた。
「おやおや、あんたたちも自衛隊かい?」
「いいえ、昭和の
20年代から30年代の、警察官です。」
あたしが言うと、ムネさんが次ぐ。
「映画の『若いお巡りさん』や『白いジープのパトロール』のころです。」
「へえ、巡回映画で見たあれのころねえ…。『もしもしベンチでささやくお二人さん』って歌いだしの、あれかい?」
「そうです、曽根史郎さんの歌です。」
「へええ、コスプレって、いろいろあるんだねえ……。『若いお巡りさん』は死んだ兄ちゃんが好きで、よく歌っていたっけね…。」

かくてあたしたちは、ここでしばらく、警備員のおばちゃんの世間話につきあうことになった。もちろん、高美先輩や守村君、あずさ、高村君も交えてのコスプレの定義や解説も含めてだ。

そのあとは、高美先輩のつてで呼んだ屋形船で、打ちあげを兼ねた花火大会観賞と相成った。今回は悪天候で
1日花火が順延になったので、偶然重なっただけだが。
陸に上がってからは、再び鳴海別働隊になる。
このあと鳴海別働隊はイベントがもう一つあったんだけど、それは本編からいささかずれるので、機会があったらお話するということで。
なんだかんだいって、面白い一日だった。また、ペアを組んで行動したいな〜。