白昼夢
社会人編
〜隣もコスプレイヤー〜
コスプレ集団・レイヤーズのメンバーの持っている車は、そのままロケハンに転用できるようにしてある。宗村のコンフォートはフロントグリルなどを改装して初代クラウン風にしてあるし、園田のトゥディはニトロ噴射機能こそないが、足元はワタナベのホイールで、内装も『逮捕しちゃうぞ』仕様に簡単に改装できるようにしてある。
そんなある日の早朝。
河川敷の公園で、レイヤーズは早朝ロケを敢行した。うかつに土日の昼間にロケを張れば、見物人が来て撮影にならなくなるのは眼に見えている。
なぜ河川敷の公園を選んだか。それは、キロメートル単位で続く直線の舗装道路があるから。事実CMやテレビドラマ、映画のカーチェイスシーンはもとより、自動車教習所で教習生に見せる、危険な運転や事故再現シーンの撮影にも使われている。
さて。レイヤーズのロケハンでは、アクションは犬飼と夏実のバイクを使ったものだけ。「はたらくくるま」といった子供向けの本や、警察の広報写真に使えそうな、制服姿の警察官と警察用車両の走行シーンと、車両を傍らにしたポートレート風ショットが中心である。もちろん、制服は男性陣は昭和43年式、女性陣は昭和51年式で、必要があれば他の年式の制服や、交通機動隊の乗車服姿にもなるし、トゥディがあるから、ノーマルホイールで交通課のミニパトカーとして撮影したあとでワタナベのホイールに換装し、犬飼@夏実、鳴海@美幸で、原作版、アニメ版の『逮捕しちゃうぞ』も撮っている。

右、守村扮する甲田巡査の自転車警ら。左、犬飼扮する「城北の青き疾風」、交通機動隊の白バイ隊員。

左右ともども、「城北の白き稲妻」宗村夏実、交通機動隊の白バイ隊員と、「駐在さんの警ら」、宗村高光の自転車警ら。
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「制服姿で自転車に乗って走るだけで絵になるんだから、不思議よ。」
交通機動隊の乗車服姿の犬飼が言うと、鳴海が次ぐ。
「キャラクターの雰囲気が、違うもの。ムネさんと先輩では。」
撮影にあたるレイヤーズのカメラマン、岡部慶四郎が引き取る。
「あの三人は下手なアクションより、警ら、立番、地理教示といった日常ありふれたシーンのほうが、絵になるんだ。」
予定した撮影内容すべて撮ったので、撤収する。いつもの移動手段は時間が予測できる公共交通機関が多いが、今日はロケハンで車を使うのと、時間が早いので、交通機関は車になる。高村は、犬飼、夏実のバイクを白バイ風に換装する装備、園田のトゥディを普通のミニパトに戻すためのノーマルホイール、白く塗った自転車などの機材を運ぶため、ボンネットトラックのデザインが残る年代物のハイエース。犬飼と夏実は、白バイになっているモデルのバイク。あとのメンバーは、熱川のランドクルーザー、守村の赤のファミリアハッチバックに分乗し、一足先に帰っている。
レイヤーズは、パトカーと同じ塗装の、地域巡回パトロールのボランティア活動も行っている。今日は鳴海と宗村が当直の日。よって二人は制服姿で警らし、それから帰ることになる。
「さてと。あとは岡部さんがデータを整理するのを待つだけだ。」
「先輩のクイックターン、絵になっていたね。ムネさんの曽根史郎巡査も捨てがたいけど。」
「先輩は、現役白バイ隊の首塚さんから、経験者採用枠で交通機動隊に来ないかってスカウトされたらしいよ。」
「本当なの…?だけどさ、ムネさん、高村君、守村君は、普通に走っていて絵になるから、不思議よね〜。」
「そうかい?おだてているわけじゃあないよね。」
「事実だもの。岡部さんも言っていたわよ。あの三人は下手なアクションよりも、日常ありふれたシーンを再現させたほうがはるかに絵になるって。」
「ということは、僕らはレイヤーズの目標にかなっているわけだね。」
まだ6時を少し過ぎたぐらいなので、公園内はジョギングやウォーキング、犬の散歩の人がちらほら見える。園内の幹線道路は、先に触れたとおり、片側1車線の直線コース。セスナ機ぐらいなら、離陸できそうだ。
「この道路は、特撮のエンディングで主人公が乗ったバイクが走るシーンの撮影でも使われているんだ。」
宗村が言うと、鳴海は返す。
「じゃあ、あたしたちはその向こうを張ったことになるわね。普通の警察官に加えて、『逮捕しちゃうぞ』、『多甚古村』、『若いお巡りさん』の撮影をやったわけだから。」
「これで、内藤さんが来られたらなぁ〜。内藤さん、白の三菱ジープ持っているだろう。あれで、僕が助手席に座って、高村がハンドルを握ると、『白いジープのパトロール』も撮影できたんだけどな。」
「ま、それは次回ってことにしましょ。こういう形でのロケハン、いつできるかわからないけどさ。」
こんな会話をしつつ、コンフォートは幹線道路に出る坂道へ。ここには信号がある。土日休日になると公園に来る人で混雑するからだ。
信号待ちで停車して、数秒後。左折レーンに軽自動車が入ってきた。
「ムネさん、あれ…。」
「なんだい…、だわー!!」
左隣には、RPGのキャラコスをしたレイヤー三人が乗っている。ハンドルを握るのは、金髪ショートカット。その傍らは、シルバーブロンドのロング。後部座席には、姫役か、青いドレスで黒髪ロングの女性。
無論、反対側も古めかしい外見とはいえ、パトカー風塗装で制服制帽姿の男女ペアが乗っているのだから、驚いている。周囲の騒音と窓を閉め切っている関係で、声こそ聞こえないが。
そうこうしているうちに信号が青になったので、発進させる。
しばらくして、鳴海が言う。
「…あの人たちも、あたしたちと同じ、早朝ロケハンを敢行したようね。」
シフトチェンジしながら、宗村が返す。
「そのようだね。いやあ、朝だからいいけどさ、これが夜中の山道だったら怖いよ。群馬方面には、ドイツ村やロックハート城という、コスプレイヤー向けのイベントができる施設があるから、夜の山道で、着替えたままコスイベントに向かうレイヤーと、今のような出っくわしかた、するかもしれない。」
「心臓に、悪いわね…。」
このあと二人は、防犯パトロールの受持区の警察署に赴き、点検を受ける。
そこでさらに、二人は驚かされた。「警視庁」のステンシルで、回転灯は赤。撮影に使ったときのままだ。しかもこのクラウン風コンフォートは教習車がベースなので8ナンバーだから、なおさら驚かれるだろう。
「これなら驚かれても無理はないわよ、あの人たちに。」
「早く交換しないと。」
警察署の担当者が来る前に、地域巡回用の青の回転灯、「地域巡回車両」のステンシルに張替え、何事もなかったかのように、出迎える。
そこで、他のパトロール隊からの申し送り事項を聞き、出発する。
走り出してから、宗村が、
「いやあ…、とんだことをやったようだね。」
というと、鳴海はくすりと笑い、返す。
「何も言われなかったから、いいんじゃないかな…?」
だが、縁があるというのは不思議なもので、警備出動中のレイヤーズと、早朝ロケのレイヤー三人組は再会する。
そのとき話は長くなるので、また後日。