白昼夢外伝
〜長井隊員と園田巡査〜
以下の短編は、「長井科学特捜隊隊員と園田巡査」のストーリーである。
園田巡査は事件現場の現況監視のため、立番していた。警ら課警察官は、事件発生時には初動捜査にあたるとともに、しかるべき専務警察官が来て、捜査が終わるまで現況を維持することが任務になる。
今回発生した事案は、とある事務所に勤めている全員が、忽然と消えてしまったというもの。全員失踪する理由はなく、持ち物も残っている。それどころか、机の上には飲みかけのお茶や、書きかけの書類がそのまま載っている。仕事中の状態で、全員消えているのだ。普通の事件ではないと判断した捜査課の刑事は、科学特捜隊に出動を要請し、一件書類作成に必要な情報を得ると、鑑識課と共に引き上げた。
園田巡査は、そのあとも現況を維持するための立番を続けつつ、科学捜査隊の隊員の到着を待っている。
(いったい、いつになったら来るんだろう。そういえば科学特捜隊には紅一点の美人がいたな。あの人、タイプなんだよね…。)
いいかげん園田がじれてきたところにやってきたのは、科学特捜隊の紅一点、長井美幸隊員だった。
(えっ、来てくれたのは紅一点!?)
同期の熱川巡査、清水巡査に代わってもらいたかった立番だったが、していてよかった。
園田の目の前に来ると、彼女は敬礼をし、言う。
「科学特捜隊隊員、長井美幸。事件現場の捜査に来ました。」
「警視庁万世橋警察署岩本町派出所勤務、園田方也巡査であります。話は上官から聞いております。中をご案内しましょう。」
指紋をつけないよう、木綿の手袋をはめてから、ドアを開いた。
長井隊員の質問に、園田巡査は知っている限りの情報を伝える。突っ込んだ質問が来るが、現況監視にあたっている警ら課の巡査では、答えられないこともある。それは、警察署の捜査課、鑑識課で聞いてほしいとしか言えない。
(あ〜あ、科学特捜隊か〜。装備も充実しているし、各地で活躍しているもんな〜。)
小銃と催涙弾発射機、拳銃しか攻撃する装備がない警察は、怪獣が出た場合、住民の避難誘導と、ウルトラマンが去ったあと、消防や自衛隊とともに瓦礫の中で救護活動にあたるだけだが、科学特捜隊は違う。怪獣を攻撃できる武器がある。
パイロットスーツを思わせる、グレーの体に密着する制服に、ヘルメット姿の長井隊員を見て、園田巡査は考え込む。
(うちの警察署にも、こういう人がいたらなあ…。警察にも、こういう装備があったらなあ…。)
「ところで園田さん。」
「は、はい。」
長井の声で、我に返った。
「ここでつかめる情報は、全て把握しました。本署の捜査課に案内してください。」
「わかりました。」
園田巡査が電話を借り、本署に連絡しようとしたそのとき。地震とも爆発ともつかない振動と大音響とともに、丸の内のビル街に煙があがるのが見えた。
それに、怪獣の姿も。
「大変だ!」
「すぐに行かないと。」
長井は科学特捜隊の隊員、園田は岩本町派出所勤務の警察官としての任務がある。長井は怪獣と戦い、園田は受持区内の市民を安全な場所へ避難させなければならない。
とそこへ、園田の先輩で、同じ派出所に勤務する、古参の守村巡査がやってきた。
「伝令。園田巡査は科学特捜隊を支援せよ。」
「えっ!?」
意外な言葉に、園田巡査は返す。
「いいからお前は、ここにいる科学特捜隊員殿を支援しろ。住民の避難誘導は、わしらがやる。」
「わかりました。園田巡査は、科学特捜隊隊員を支援します。」
「それじゃあな。がんばれよ。」
今日、交番で勤務しているのは、交番長の湯浅巡査部長、古参の守村巡査、それに警察学校同期の熱川巡査と清水巡査。湯浅部長と守村巡査は、下町が狙われた昭和20年3月10日、赤羽、王子、池袋方面が狙われた同年4月13日、杉並、中野、練馬方面が狙われた同年5月25日の三次の東京大空襲をはじめとした空襲を経験しているので、避難誘導には慣れている。それに、熱川と清水は、機動隊に配属されてもおかしくない、活動的で元気いっぱいのコンビ。この四人に任せておけば、安心だ。
園田巡査は長井隊員のほうを向き、言う。
「では長井さん、自分が的確な地点までご案内します。」
「お願いします。」
長井のように怪獣と戦う武器はないが、こちらには頭に叩き込んだ受持区内の地理情報がある。的確な場所へ案内し、彼女が本部に情報を送り、ウルトラマンや他の科学特捜隊隊員を支援する。その手助けができるのは、僕だけだ。
園田巡査と長井隊員、二人の怪獣との戦いが、始まった。