制服描写の注意点
拳銃吊り紐・警笛吊り紐編


重垣:このシリーズで警察官制服、警備服を主体に解説するようになって、はや何年…。おかげで制服描写に詳しくなってきました。というわけで今回は、ネット上で散見する警察官制服でよくありがちなミスについて、現役警察官の宗村夏実さんをゲストに招いて、解説していきます。今回は、拳銃吊り紐、警笛吊り紐についての解説です。
夏実:よくネット上のイラストで見られるミスは、

1、左肩につけている。
2、末端部分を露出させる。
3、右肩につけていても単なる輪になっている。

この3点なんだ。
重垣:「美術館」では、左肩につけているというのは見たことがありませんが、残りの2点は、何回かありますね。

1 2
3 4


誤った装着例 1、左肩につけていて、単なる輪になっている。2、末端部分が拳銃につながっていない。3、単なる輪になっている。4、左肩につけていて、単なる輪になっている。

クリックすると拡大されます

夏実:ネット上のコスプレ衣装の「婦人警察官」のモデルが、このような着装でいるのが原因でしょう。実際の警察官の着装を観察するなど、よく下調べを行ってから描いてほしいものです、それはともかく、実際は、警笛吊り紐、拳銃吊り紐共に、利き手側の右肩につけます。
重垣:右利きが多いからですか。
夏実:ええ。左利きであったとしても、着装の調和のため、右肩につけます。
それに、名前の通り、拳銃、警笛が先端についているんだ。だから日本の警察用拳銃は、自動式25口径でも、拳銃吊り紐をつける金具がつけられているものもある。だけど、モデルガンで金具がついているのは、ニューナンブしかないから、官庁系レイヤー泣かせなのよ。他にも警察用拳銃として使われたタイプはあるんだけどさ。
重垣:何回か種類については、ご紹介しましたね。使っている様子は、イラストでわかります。

1 2 3
4
1、2、交通整理にあたる婦人警察官。警笛吊り紐の着装がわかる。3、4は拳銃吊紐の着装が分かる。
クリックすると拡大されます

夏実:拳銃吊り紐、警笛吊り紐は、軍服の参謀肩章のような、飾りではないわけ。拳銃吊り紐は、麻か化繊のロープ、警笛吊り紐は、輪になっている部分は飾り編みになっています。ちなみに、拳銃吊り紐は昭和40年代までは紺色を使っている所もあった。そうそう、警笛吊り紐は、平成6年までは婦人警察官と交通巡視員しか装着できなかったのよ。
重垣:なぜです?
夏実:昭和27年式、32年式、43年式警察官制服は、腰ポケットは飾りで、物が入れられないし、拳銃も装備するから。婦人警察官と交通巡視員は、腰ポケットがあるので、交通巡視員は冬服、夏服着用時、婦人警察官は盛夏略服のときでも上着腰ポケットに入れていました。
重垣:そうはいっても、点検時や着装規定には警笛は入っているでしょう。警察官でも。
夏実:ですから、男性警察官は、警笛吊り鎖を使い、右胸ポケットに入れています。

1 2 3
1、2は拳銃吊紐に隠れて見えづらいが、右肩に警笛吊り鎖を装備している。3は拳銃吊紐を装着する金具がない場合の特例。
クリックすると拡大されます。

夏実:ちなみに、拳銃吊り紐が金具がない拳銃のときは、拳銃吊り紐はつけなくてよいことになっています。だから、さっき言った拳銃吊り紐金具がない拳銃については、これを適用するしかないわね。皇宮警察では一般の警察官と区別させるため、臙脂を使っています。
重垣:警備員で臙脂を使っているのは、警察官と区別させるためですか?
夏実:その通り。警備業法で、警備員の制服は警察官と明確に区別できるようにしなければならないと定められているんだ。だから、黄色や臙脂を使っていることが多いんだ。
重垣:ところで拳銃吊り紐は、平成6年のモデルチェンジで電話の受話器のコードのような形になって、ベルトに装着することになりましたが、警笛吊り紐は、警備員のみならず、警察官も胸ポケットに入れていますよ。


左、平成6年式警察官制服の拳銃吊紐(3人目は昭和39年式鉄道公安職員に扮している、右、警備服の着装例
クリックすると拡大されます

夏実:平成6年式に変わった直後は、昭和43年式の名残で、男性でも上着の腰ポケットに入れていたんだけど、今じゃあ吹きやすいから、警察でも胸ポケットに入れているわね。それも、非公式の着装ではなく、公式に認められているようなのよ。活動服のときは警笛鎖にしているから、胸ポケットに入れているけどね。皇宮警察は長いこと、腰ポケットに入れていたけど、何年か前から胸ポケットに入れるようになったわね。あれは絵にならないから、上着を常時着用する皇宮警察だけでも、続けてほしかった。
(と、そこへ近藤衛恵がやってくる。)

1 2 3
4
1、2、3は警備部の警備一課「地域課」の警笛吊り紐着装方。4は警備三課「交通課」の着装方。
クリックすると拡大されます。

近藤:「世界を制服で征服する」ことを最終目標とする秘密結社、世界征服屋の近衛部隊を基礎に編成した、世界制服屋警備部では今も、警笛は腰ポケットに入れるよう指導しています。警備1課が臙脂を使うのは、皇宮警察を意識しているのもあります。
夏実:逆にこっちのほうが、警察官と区別できて、いいかもしれないわね。男性用は一世代前の帯革装備だし、女性用は昭和51年式にそっくりだからね。
重垣:というわけで、今回の要点は以下の通りです。

1、警笛吊り紐、拳銃吊り紐は飾りではない。単なる輪ではない。また、先端部分を露出させることはなく、先端に拳銃、警笛がつく。
2、拳銃吊り紐は拳銃につながり、拳銃嚢に入る。警笛吊り紐は警笛につながり、婦人警察官は腰ポケットに入れる。
3、昭和43年式までの男性警察官は、警笛を装備する場合、警笛吊り鎖を使い、胸ポケットに入れていた。

夏実:以上のことを注意して、「美術館」を見直すと「ああなるほど」と思うから。衛恵さん、助言ありがとう。
近藤:どういたしまして。