粉砕伝説ジュリバン外伝
外伝第18話
〜東京警察・消防展〜


東京ビッグサイトの西ホールと屋外スペースをまるまる借りきっての消防用の機材をあつかう会社と警備会社の見本市、その名も警察・消防展に、世界制服屋と世界制服屋警備部は出動していた。といっても警備部も出展企業としてだが。
会場は東京の治安と防災をつかさどる警視庁・消防庁の啓蒙・啓発コーナーと、機材メーカーと警備会社の企業スペースに分かれていて、啓蒙・啓発コーナーでは、事故車両や窃盗事例、火災事例、制服ファンのみならず気になる警察官・消防官の装備の変遷の展示、警察犬や救助犬の実演…があるかと思えば、普段めったやたらに見られない消防車やパトカーといった特機が来ているうえ、警視庁と消防庁の音楽隊・カラーガード隊が華をそえているから、本物の緊急自動車に乗れるというのでやってきた親子づれや装備や特機、制服系のファンもあっちこっちにいる。
企業スペースはというと、ポンプ車や化学車、救急車…などを改造する特機車両メーカー、防犯用のドアロックやカラーボール、防犯ブザー…といった防犯用品の会社、消火器や自動消火装置メーカー、脱出用の救命袋、避難はしご…といった防災設備を扱う工務店、通報装置の解説をする警備会社、救助用のドアカッターやエンジンカッター、ミニレッカーをあつかう工具メーカー、空気呼吸器や化学防護服などをあつかうガスマスク・メーカー…はもとより、避難先では欠かせない炊き出し機材や仮設便所、非常袋の中身の乾パンやアルファ化米の会社、消防吏員などの制服を扱う被服メーカーなども来ているから、制服の製造販売を行う世界制服屋が来ていてもおかしくはない。もちろんここではコレクターやコスプレイヤー相手に払い下げやレプリカを販売するのではなく、現行のものを市町村消防局や警備会社などに売りこむので、警備服や消防官の制服がメインだ。


試供品の非常用ビスケットをぽりぽりかじりながら、社長の犬飼高美が、
「平日は業者関係や現役さんが多かったけれど、休みの日は子供づれやそっち系のマニアが多いわね。」
というと、副社長の岡崎理恵が次ぐ。
「土日と音楽隊にカラーガード隊が来ますし、パトカーや消防車にはめったやたらには乗れないですからね。」
「あたしも、展示で出ていたミニパトの車内をまじまじと見てしまったわ。」
高美が返すところに頭上から、
「中をぐるっと回ってきましたけど、帽子やネクタイピン、それにレプリカ装備といったグッズを売っているところもありましたよ。うちも法律に引っかからない程度のものを売ったらいかがでしょう。」
という声が降ってきたので目線をあげると、警備部の制服姿の近藤衛恵警監と内藤武士警佐、官房勤務の服部制子と工藤智美が、資料やパンフレットを片手に立っている。
「ぜひとも部にほしいアイテムがいくつかありましたから、資料をもらってきましたよ。」
警備部は制服屋の隣のブースに位置していて、外事課と人事課の面々があわただしく働いている。会社説明を行っている人事課長の遠藤警正は、今日は制服姿だと威圧感があるので、めずらしく背広姿だ。

一方そのころ…。
各警察署や消防署、
OBなどから集めた装備品・装備車両の変遷のコーナーで、世界制服屋のあるK交番勤務の宗村夏実巡査と早川美冬巡査は、白手袋に山高帽風の正帽、背広式の制服、スカート姿と制服ファンにはたまらない姿で解説にあたっていた。
「催し物の応援っていうからてっきり雑踏警備かと思ったんだけど、なんだかモデルになったみたいね。」
美冬が言うと、夏実が返す。
「遊園地の係員にもね!」
二人は子供が来るとパトカーに乗せてやり、マニア相手には解説し、子供用の制服を着せて記念撮影に写る…と大忙しだ。
「ありがとうございました。」
「こちらこそ。」
女の子の撮影が終わったところで、さきほどからミニパトを撮っていた制服ファンらしい青年が、
「あの…、写真を一枚取らせていただいてもよろしいですか?」
と言ってきたので、夏実は、
「ええ、いいですよ。なんならポーズを取りましょうか。」
というと、美冬が返す。
「ミニパトの中に乗った状態がいいですか。それとも敬礼?」
「ええっ、いいんですか。それなら両方でお願いします!」
二人してカメラに収まったあとで、
「お二人は交通課なんですか。」
と青年が質問したので、夏実が制服の下の着装ベルトを見せながら返す。
「あたし達は交通課ではなく、地域課なんですよ。だからほら、交通腕章もしていないし、警笛も持っていません。今日は警棒と手錠しかしていませんが、普段は拳銃も装備します。」
言われてみると、二人は婦警イラストに必ずといって描かれる緑と白の交通腕章も、白い警笛モールもつけていない。
「いやあ、うかつでした。」
青年が返すと、美冬がつぐ。
「だけど、下の名前は夏実に一字違いの美冬なんですよ。偶然って面白いでしょ…?」
「ええっ!?」

展示解説には、宗村夏実、早川美冬といった現役警察官・消防官にくわえ、装備や服制の変遷などに興味がある民間の有志や防災ボランティア、防犯協会や交通安全協会の会員などがあたっている。もちろん、世界制服屋警備部のコスプレ好きのメンバーで編成した官庁系レイヤーの集団、ガーディアン・ユニッツも出動中だ。

紺色の刺子布で作った昭和五年式防火服の熱川進消防手と、アルミコーティングの昭和五一年式防火服の清水清司消防士が解説を現職にひきついで休憩スペースにやって来ると、詰襟五つボタンの明治四一年式制服の守村義衛巡査、ひざ上三センチのミニスカートだったことで語り草の昭和四六年式制服の森川あずさ巡査の二人が一服つけていた。
「あら、二人も休憩?」
あずさがいうと、熱川が、
「いやあ、やっと休憩っす。なんたってボンネット式消防車に来るガキンチョは扱いにくくて、どやしつけてやろうかと思いましたよ。」
と次いだので、彼女は返す。
「扱いにくいといっても、車を壊さないかぎりどやしつけちゃだめよ。」
対面に座った清水が、守村の制服を見て、
「おや、守村さんの制服は詰襟五つボタンですけど、レイヤーズの宗村さんのとは違いますね。」
というと守村は、
「制服の区別ができるようになるとは、君も制服屋の社員らしくなってきたってこった。」
と言いながら立ちあがり、上着のポケットを指差した。
「ムネさんのは昭和一〇年制定のデザインで、今の詰襟五つボタンの学生服と同じ形だけど、俺のは明治四一年制定の巡査部長と巡査のものさ。 切れこみ式のポケットが腰と胸に二つずつの合計四つあって、ボタンは無地、帽章はプレス式になっているのが見分け方さ。明治と昭和年間も含まれるけれど、関東大震災や米騒動のあった大正年間の制服といっても過言ではないかもしれないね。」
あずさが次ぐ。
「『サクラ大戦』で巡査部長・巡査が出てきたら、よく見てみると面白いかもね。それでポケットのデザインが今の学生服みたいなデザインだったら、考証ミスだと指摘できるわ。ま、原作『逮捕しちゃうぞ』も考証ミスが多いって言っているけど。」
「ところで、このフィギュアと乾パンは…?」
清水が言うと、あずさが次ぐ。
「乾パンは食べていいわよ。義衛君が『出動、一一〇番!』と『出動、一一九番』っていう企画食品景品にはまってて、全部集めるんだってがんばっているのよ。」
守村が返す。
「いやあ、三五分の一で警察官は明治八年、消防官は明治一三年から現在までの制服、装備を再現するっていうからさ、思わず買ったんだよ。」
乾パンメーカーと模型屋が組んではじめた、一連の日本の警察官と消防官のフィギュアシリーズ、『出動、一一〇番』は、歴代の男性・女性警察官、『出動、一一九番』は歴代消防官の制服姿はもとより、作業服や出動服、防火服までも精密に再現してあるというシロモノ。しかも市販の戦車模型に組み合わせられるよう三五分の一というスケールにこだわっているから、おそれいる。
「そういやあ、ユリイカの常連でサンプル屋の高村もせっせと集めているな。うわさだと、彼が担当者に『三式中戦車の上に両津を、九〇式戦車のわきに現行制服の辻本夏実を置けるようにしたら面白いだろうねえ』といったんで、三五分の一スケールになったらしいぞ。」
頭上から声がしたので一同がふりあおぐと、長身の警備一課課長の内藤武士警佐と近藤衛恵警監がいた。
「うちの店にもよく来る、スタントのサンディが出るショーが屋外会場であるそうだから、みんなひまだったら行ってみない?」
衛恵が言うと、あずさが、
「前回は怪人が暴れたおかげで、ろくに見られませんでしたね。」
と次いだので、熱川が返す。
「遊園地警備で出動していたうちらは、騒ぎを静めなければならなくなってしまって、サンディさんの演技どころではなかったっすから。」
野外会場では、消防車や救急車、パトカーに炊き出し機材やフォグガンといった消火用機械の実演などに加え、消火器の操作体験や防炎加工品の比較実験、シートベルトや起振車の体験などがおこなわれている。
家族づれは緊急車両の体験乗車コーナーに行列を作っていて、ステージでは警視庁と東京消防庁のカラーガード隊が音楽隊の演奏にあわせて演技をしているのを見ようと、その手のファンがあつまっていた。
カラーガード隊のアンダースコートが見えそうなきわどい演技を見て、思わず昭和三二年式制服の中島巡査が赤面すると、となりにいた川崎巡査が返す。
「すごいものを見てしまったな。」
「目線が合ったんだよ、どうしよ。」
二人を見てくすくす笑うのは、昭和四八年式婦人消防官制服の各務まゆみ消防士と昭和四六年式制服の岡部百合恵巡査。
「やっぱり男の人って、そういうものに目がいくんですかね?」
「偶然と取ってあげましょ。」
「お、なんだ。百合恵とまゆみはここにいたんだな。」
休憩スペースから合流した内藤達もふくめ、総計一〇名の警備部の面々は、親子連れから少し引いたところでボーサイダー・ショーを見ることにした。

「さあ、これからボーサイダー・ショーがはじまるよー!」
司会の女性の声とともに古新聞やゴミ袋など、燃えやすい物を置いた民家の玄関先のセットの前で、見るからに悪役でございといった怪人が、
「俺はヒツケーン、今日はこの家を放火してやる。」
と口上がわりのセリフをいうと、民家のセットから飛び出してきたヒロイン・東消子あずま しょうこが叫ぶ。
「あっ、放火怪人ヒツケーン!お前なんかに火をつけさせはしないぞ、ボーサイダー、来てー!」
「これは大変、みんなもボーサイダーを呼んでね、助けて、ボーサイダー!」
司会のナレーションに合わせ子供達が、
「ボーサイダー!」
と呼ぶ、戦隊物ショーお決まりのやり取りを見ていたまゆみが、
「ねえねえあずさ、な〜んかあの怪人、どこかで見たような気がしない?」
というと、あずさも首をひねる。
「どこかで見たような顔ねえ…。」
すると、同じく考えていた衛恵が言った。
「あれ、ハンターよ!」
「ハンターだって!?」
一同がよくよく見ると、放火怪人ヒツケーンは世界制服屋の名目上の店長、狩田ハンターではないか。
「なんであんなとこにハンターが!?」
「本業はどうした!?」
警備部の面々がわいわい騒いでいる姿を見て、ハンター@ヒツケーンは、
(なんたって警備部の連中がいるんだよ…。しかも歴代の警察官に消防官の制服姿で……。)
と思いつつ一同を指さし、わめく。
「やかましい、そこ。騒ぐとそっちも火をつけるぞ!」
ハンターのセリフに内心むっと来た衛恵は、ハンター@ヒツケーンをびしりと指差し、号令する。
「なにを言うか、ヒツケーン、お前の好きにはさせないぞ。ガーディアン・ユニッツ、防災出動!」
衛恵の号令とともに可搬式ポンプに走っていった熱川は、ホースの筒先をハンターへ向け、タンカを切る。
「貴様のつける火なんか一分で消してやらあ!」
もちろん、可搬式ポンプには運転担当の清水がいて、彼の「送水開始」の合図があればいつでも可能状態にしてあるし、熱川のかたわらの内藤は制帽のあごひもをかけ、
「いいか熱川、筒先は左右になげ。暴徒鎮圧の要領だ。」
などと助言しているからハンター真っ青。しかも各務と岡部は消火器をかまえ、
「すぐに消し止めてやる!」
「あんたのつける火なんて、せいぜいそこにある古新聞に焼けこげをつける程度でしょ!」
と返すし、あずさは、
「火をつけた瞬間、あんたを放火の現行犯で逮捕してやるわ。」
といって手錠をショルダーバッグから引っ張り出したので、かたわらにいた守村は言いきる。
「罪状は現住家屋放火だな、刑は重いぞ。」
「これのどこが現住家屋なんだよ!!」
ハンターがわめくと、消子が返す。
「あたしたち、東一家が住んでいるのよ!」
あずさが次ぐ。
「現住家屋放火にはならなくても、放火罪は成立するわよ。」
ハンターはあずさ、守村と消子とのやりとりで夢中になっていて気がつかなかったが、そのあいだに中島・川崎コンビはごろごろと立体駐車場にあるような車輪つきの消火器を引っ張ってきて、
「さあ、火をつけてみろ!」
といってノズルを構えた。大型消火器を至近距離から吹かれたらたまったものではないが、演技を中断するわけにもいかない。
えい、もうどうにでもなれとばかりハンターは号令する。
「ううっ、負けてたまるか。ものども、着火!」
戦闘員が火をつけようとすると、ガーディアン・ユニッツの指揮をとる衛恵の右腕もあがる。
「放水用意…。」
消火担当は消火器の安全ピンに手をかけ、清水はエンジン出力を最大にした。筒先を握る熱川は水圧に備えふんばる。
見物している子供達はざわざわと、
「ど、どうなるの…?」
「おもしろくなってきたね…」
などと言いあっているが、舞台監督は青くなる。そう、警備部とハンターのやり取りは一切台本にないうえ、そもそも本来のヒツケーン役の役者が病気になったため、衣装をリースしている世界制服屋の社長がおん自ら急遽代役として出ることになったのだ。
「お、おいサンディ、早く出ないと大変なことになるぞ。レイヤーが変なことを言ってからんできているんだ。」
一方サンディは慌てず騒がずヘルメットを被り、落ち着き払って返す。
「まだまだあたしの出番じゃなさそうだね。あんたもこの仕事長いんだろう、間を読まなきゃあ。」
警備部の面々が消火器やホースを向けているので、戦闘員は、
「おい…、火をつけていいのか…?」
「つけた瞬間、一斉放水されそうだぜ…。」
とひるむと、指揮を取るハンターは、
「なにをしている、早く火をつけろ!」
と叫んだから、衛恵は号令する。
「ポンプ、送水弁開放用意!守村と森川は着火と同時に現住家屋放火の現行犯で逮捕せよ!」
「了解!」
「承知。」
消火担当はいつでも放水できるようにし、守村とあずさは着火の瞬間ハンターを放火の現行犯で逮捕しようと身構える。
「火がついたら一斉放水か?」
「えらいこっちゃだな。」
観客がざわめきだしたところに、
「そうはさせるか!」
という決めゼリフとともに、重い機材をものともせずにひらりと舞台に出てきたのが、真打登場サンディ@ボーサイダー。ころはよしと判断したのだろう。
ボーサイダーは防災ヒロインだから、特撮ヒーロー風の衣装に高圧の水で火を消すフォグガンの機材を背負っている。
ハンターが指さしてわめく。
「お前は何者だ!」
「東京都民を災害から守るボーサイダー、参上!」
このセリフに、ボソッと守村がつぶやく。
「俺、埼玉都民ってやつなんだけど。」
まゆみが次ぐ。
「あたしもね、総武線で千葉から来ているのよ。」
すると、岡山出身、東京都下在住のあずさが返す。
「新手の地域限定ヒロインね。」
「あ、ボーサイダー!」
「ボーサイダー、まってたよ〜!」
サンディは慌てず騒がず、ヒロインの余裕を見せるかのごとく声援を送ってくれた子供たちに答えると、
「ヒツケーン、あんたの好きにはさせないよ…!」
とタンカを切りながらフォグガンの引き金に手をやった。
彼女は安全装置が外れていたのを忘れていたうえ、フォグ・ガンの出力を最高にしてあったからたまらない。一平方センチ当り三〇キログラムという高圧放水が至近距離から発射されてしまい、もろにくらったハンターは、うしろにいた戦闘員とともに数メートル吹っ飛んでしまった。
「どわっ!」
事情を知らない見物の子供達からは、
「あ、ヒツケーンが吹っ飛んじまったぞ!」
「うわ〜、すげ〜。」
「ボーサイダー、かっこいい〜。」
と歓声があがるが、直撃を食らったハンターは火をつけるはずのゴミの山へおっこちてしまった。関連会社の名目上の社長とはいえ一応はグループの上司だから、あずさと守村は引っ張りあげる。
「おい、しっかりしろハンター!いや、今は放火怪人ヒツケーンだな。」
「ほらほら、まだ演技は続いているのよ。」
頭にりんごの芯やら魚の骨、誰かが捨てた備蓄食料の試食コーナーで作ったカレーの食べた紙皿などの生ごみまみれのうえびしょぬれというさんざんな姿になったハンターは、ふらつきながら言う。
「うう、ボーサイダー、なにも火をつける前に至近距離からフォグガンをぶっ放すこたぁないだろ、過剰防衛だって、絶対!」
すると、サンディ@ボーサイダーは、

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「ふははは、火は小さいうちに消し止めるもの。」
と余裕綽々で返すが、内心は、
(うわ〜、やべ〜。安全装置はずれてたのかよ…。それに、出力最高で放水しちまったみたいだな…。)
と大あわて。しかし特撮ヒロインの衣装のフルフェイス・ヘルメットで顔が隠れているから、外見上はわからない。
ハンター@ヒツケーンは、守村に向かい、
「おまわりさん、こりゃあ過剰防衛だぜ!」
というと、
「確かに過剰防衛かもしれないが、あんたのやった行動だって犯罪が成立していないかって言われると、そうともいえないよ。」
と返したから、かたわらにいたあずさに、
「婦警さん、あんたも見たろ、な。」
と振ると、彼女も警察手帳片手に、
「ともかく、服を乾かさないとね。それに、ごみまみれじゃあ帰るに帰れないでしょう?事情は交番で聞いてあげるから。」
といい、足取りの怪しいハンター@ヒツケーンに肩をかして退出させる。
「過剰防衛だって、絶対!ボーサイダー、あいつを傷害罪で逮捕してくれ!!」
「はいはい、とりあえずあんたの放火未遂の事情を聞いてからね。」
舞台裏にあずさ、守村の二人とともに入ってきたハンターを見て、監督は一言。
「一時はどうなるかと思ったよ。」
一方、放水寸前だったほかの警備部の面々はというと、衛恵の、
「警戒態勢解除。各人、持ち場に戻れ。」
でかまえていたノズルをおろし、本職顔負けのきびきびとした動作で撤収したので、見物人からは、
「もしかして、本職がやっているの…?」
という声があがる。
ハンターがふっとぼうが、歴代制服の警察官・消防官が飛び入り参加しようがショーは台本どおりつつがなく、消子とのやりとりで進み、
「ヒツケーンは燃えやすいものを見ると火をつけたくなる。それに、火遊びをしている子供が大好きだ。だから燃えやすいものは外に出さない、火遊びはしない!」
というサンディ@ボーサイダーの決めゼリフと消子の「よいこのおやくそく」で無事(?)ボーサイダー・ショーはおわった。

さて、警察・消防展が終わってから数日後…。
警備部から世界制服屋の事務所にやってきた衛恵が、高美に、
「うちでもカラーガード隊を作りましょうか?」
と言うと、立哨から警備所に戻ってきた武士が、
「カラーガード隊ねえ〜。目の保養にはいいかもしれないけど…。やっぱり俺らは、制服のかっこよさを売りにしたいな〜。」
と返したので、高美は次ぐ。
「それだったら、制服のままで演技してもらおうかしら。そのままの姿で演技するところもあるって聞いたわ。」
「確か…、制服姿で演技するのは兵庫のカラーガード隊でしたね。部内にも趣味は音楽演奏だとか、高校時代バトントワリングをやっていたのがいるかもしれませんから、募集してみますか。」
衛恵が返したところに制服屋専属デザイナーの本田香澄がやってきて、ハンターに言った。
「ハンター店長にせひともヒツケーンとして出ていただきたいと、○○市消防本部の広報課から電話がありましたよ。」
すると、彼は飲んでいたコーヒーをこぼし、真っ青になって返す。
「なんでまた俺なんだ。至近距離からフォグガンの三〇キロの高圧水射撃を受けろっていうのか。それとも警備部の暴徒鎮圧の要領での放水か!?それなら俺よりも、衛恵や武士といった適任者がいるだろう。」
すると、内藤が苦笑して、
「暴徒鎮圧の放水の指揮なら、とってもいいがね。」
というと、衛恵が、
「警備部予備隊の防災出動でもいいわよ。」
と次いだ。警備部予備隊は近衛部隊系の腕に覚えのある隊員が多いからハンターは真っ青になる。
「ガーディアン・ユニッツですら消火器を吹かれかけたんだから、警備部予備隊の防災出動なんて言ったら、芝居でもなにをされるかわかったもんじゃねえぞ!」
衛恵が次いだ。

SWATか機動隊に扮した警備部予備隊の面々が、あんたを不審者としてひったててくれるわよ、問答無用でね。西南戦争の警視庁抜刀隊に斬られるよりかはマシでしょう?それとも婦警特機のほうがいいかしら。それか、水をかけられた瞬間鉄帽に巻脚絆、昭和一〇年式巡査制服の守村君が出てきて、メガホン片手に『五分で鎮火〜!』なんていうほうが面白いかも。」
「あっはははは。「帰ってきた外地派遣者」というニックネームのある守村が、派遣前着ていた昭和一〇年式制服の巡査に扮するのか。あいつらしくて似合っているだろうな。そしたら熱川や清水は警防団服で出てもらうか?」
内藤の言葉に、香澄がメモ片手につぐ。
「『いやあ、あのしまらなさ加減がなんともいえませんからね』って向こうはいっていましたよ。警防展の演技がことのほか決まっていたみたいですね。」
「しまらない…。」
ハンターが絶句すると、高美が鋭く突っ込む。
「あんたは名目上の店長なんだから、たまには売上に貢献してよね!」

「ひーん!」