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粉砕伝説ジュリバン外伝
第34話
〜「巨大なガードウーマン」長井美幸、登場!〜


身の丈360メートル、36階建てビルに相当するサイズの怪獣が東京湾から現れ、真っ先にテレビ局を破壊すると北へ向かって歩き始めたからさあ大変、東京の街は東宝の映画のような状況になってしまった。
災害時には避難誘導、交通整理、非常線の展開などをする協定を区と結んでいる世界制服屋警備部本部には、近藤警監以下副長の遠藤警正、警備
1課の内藤警正など主だった幹部があつまり、情報収集をするとともに次々に指示をだす。
「遠藤警正は、予備隊を率いて非常線を引け。」
「はっ!」
「警備
2課は制服着用で救援作業にあたれ。」
世界制服屋警備部の警備
1課に勤務する長井美幸警士は、所属している世界制服屋1号店警備所所長の高城真理警尉の指示を受け、守村義衛警士、森川あずさ警士、各務まゆみ警手と避難誘導にあたる。
「河川敷の広場へ避難してください!」
その最中、近所のサンプル屋で消防団員の高村宗光とK交番勤務の宗村夏実巡査がやってきた。
「自力で動けない人を避難させなきゃならん。手を貸してくれ!」
宗村が次ぐ。
「このあいだの巡回連絡で、手を貸さなきゃいけない家はわかっている。それに、逃げ送れた人がいないかの確認と火事場泥棒が出ないようにもしなきゃならないから。」
守村は返す。
「わかった。俺ら警備部は家々を回るから。」
このあたりの地図は、防犯パトロールをするので頭に叩き込んである。
森川が指示を出す。
「あたしは
1丁目、守村君は2丁目、まゆみは3丁目、美幸は4丁目をお願い。」
「了解。」
自力で動けない人がいる家から優先的に消防団員と町内会の防災班が回り、自治会が持っている手車やリアカーにのせ、体力がある人が背負って避難させ、長井は勝手知った
4丁目に走り、逃げ遅れがないよう家々を回る。
「怪獣がこちらへ向かってきています。避難先は荒川の河川敷です!」

長井美幸は一見ただの女性だが、
M78星雲から少し…といっても光年単位だが…はなれたS53星雲からやってきた異星人。自由自在に身長を換える能力がある、世界征服屋所属の近衛部隊隊員でもある。だから怪獣が現れたというニュースを知ったときから早く巨大化して撃退したいと考えてはいたが、さすがに知りあいの中で変身するわけにもいかずじりじりしていたところに避難誘導の指令が出たので、これ幸いと飛び出したのだ。
管内民にひととおりの避難の指示を終え、人気のないところへやって来た彼女は近衛部隊の隊長でもある近藤警監ことエンプレス・ガーディアンに連絡を取る。
「閣下。自分が大きくなって、あの怪獣と戦います。」
本部で連絡を受けた近藤警監は、近くに内藤警正、首塚警正といった近衛部隊系の警備部員しかいないことを確認して、返す。
「なんだって。」
警備1課長の内藤警正ことブラックナイトが次ぐ。
「確かに自衛隊でも撃退できないから、お前が戦わなくてはならないが……、下手をすれば正体を明かしてしまうかもしれないぞ。」
彼女は返す。
「ですが、このままだと制服屋も危ないです。」
「どうするか……。」
考え込んだところへ、警備
2課、通称捜査課所属の近衛部隊員、熱川警曹からの報告が入る。
「現在怪獣は千代田区・中央区方面から京浜東北線沿線を北上中。秋葉原近辺は壊滅。台東区方面へ来る公算が大です!」
このままでは、警備部・制服屋も危ない。警備部本部も支店に退避するべく準備中だ。
自衛隊でも撃退できないとなれば、彼女が戦わなくてはならない。
近藤警監は決断する。
「よろしい、巨大化戦闘を許可する。ただし、世界征服屋・制服屋に関係があることがわからないようにしてだ。」
「はっ。」

巨大化した場合、普通の服なら破れてしまうが、彼女の警備服と手袋、靴は防弾・防刃効果がある、伸縮自在のアッシュ謹製の素材。いかなることがあっても裸になって戦うことだけは回避できる。
彼女は制服についている警備部の記章を外し、巨大化する。閃光を発しながら。

巨大化した美幸は、足元にビルを見下ろす高さになった。
「しまった、巨大化しすぎた!」
だいたい怪獣のサイズは
700メートル前後と目測したので、彼女は同じサイズになろうとしたが、怪獣の身の丈は360メートル。大人と子供のような身長差だ。しかも彼女の身長では普通のビルは膝から下、有名どころの高層ビルでも腰から下だが、戦うには困らない。
彼女は腰のホルダーから警棒を取り出し、タンカを切る。
「怪獣、器物損壊の現行犯で逮捕してやる。」
「ギャ〜ス!(訳:なんだお前…。こんなでっかい婦警さんが出るなんて聞いていないぞ。)」
怪獣は目の前に現れた巨大な存在に威嚇するべくほえるが、彼女は気にも留めない。
衛恵やサンディほどではないが、彼女も腕に覚えがあり、怪獣が暴れようが怖くはない。それに、彼女の警棒はマッドサイエンティスト・アッシュが開発した特注品。その名もガーディアンズ・ロッド。普通の警棒にしか見えないが、打った相手を麻痺させる効果がある。
「ギャース!(訳:普通なら赤と銀色の男じゃないか…?ともかく、やっつけてやる!)」
「やってきたわね!」
向かってきたところを彼女はひらりとかわし、すれ違いざま一撃くらわす。
「食らえ、ガーディアンズ・ロッド!」
「ンギャオウ〜!」
鈍いのか、それとも相手が巨大だから効き目が出るのが遅いのか、怪獣は再び向かってきた。
「まだガーディアンズ・ロッドが利かないのか…?」
今度は真正面から弱点の腹めがけ一撃。
「ンギャ〜!」
あっけなく崩れおちた怪獣をすばやく取り押さえ、持っている手錠と捕縄で縛りあげる。もちろんこれも特注品のガーディアンズ・ハンドカフとガーディアンズ・ワイヤだ。
「ふぅ、てこずらせたわね。警監閣下、身柄確保に成功いたしました。」
警備部に報告すると、近藤警監は返す。
「よし、怪獣ごともとのサイズに戻り、離脱せよ。」
閃光を発して怪獣ごと彼女は元の大きさに戻り、長居は無用とその場から離脱する。マスコミや警察などに捕まったばあい、あれこれ詮索されて世界征服屋の存在をばらしてしまうかもしれないからだ。

一方そのころ…
管内の災害弱者の避難を終え、安全地帯へ退避するべく一同が集合すると、長井がいない。
「大変だ、長井さんがいないぞ」
高村が言うと、守村が返す。
「担当地区はどこだい…?」
宗村が指差す。
「あっ、長井さんの地区には怪獣がいる!」
彼女の担当地区は、よりにもよって怪獣がやってきてしまっている。ビルは崩れ、家は倒壊している。これでは彼女は……。
「踏みつぶされないまでも、ガレキに埋まってしまったかもしれない。」
森川が言うと、守村がヘルメットのひさしを上げ、次ぐ。
「危険だと判断したら退避しているはずだ…。」
「みんな見て!」


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各務が指さした先には、巨大なガードウーマンが怪獣と戦っている。
「見ろ、巨大なガードウーマンが怪獣と戦っているぞ!」
「がんばれ!」
宗村はつぶやく。
「誰でもいい、あの怪獣をやっつけて。」

ガードウーマンが突進してきた怪獣を交わし、警棒で一撃を食らわせたた瞬間、周囲にいた人々からは驚きの声と声援が巻き起こる。
「おおっ、すごい…!」
「まさに正義のヒロインだ!」
次に一撃をいれて
KOすると、人々は声援を送る。
「取り押えたぞ!」
「やっつけろ。」
どんな必殺技を出すのか人々は期待したがしかし、手錠と捕縄で身柄を確保したとたん閃光を発し、巨大なガードウーマンは消えてしまったから、人々はざわめく。
「夢か、いったい…?」
「あれれ…?」
「どこへ行ってしまったんだ!?」
巨大なガードウーマンは、こつぜんと消えてしまった。怪獣と共に。

怪獣がいなくなったかわり、土煙の中から人影が出てきた。だれかと目をこらせば、なんとガレキの山に消えたはずの長井だ。もちろん、変身は解いている。
「無事だったか!」
硬派の守村が、思わず落涙する。
「ケガはない?」
「ええ、なんとか…。」
彼女の制服はほこりまみれになってはいるが、怪我はしていない。
「さっきね、巨大なガードウーマンが現れて、怪獣を撃退したのよ。まるで円谷プロや東宝の映画みたいに!」
各務が言うと、長井は、
(まさか、あたしが巨大化して撃退したとはいえないよね…)
といえないから、慌てて返す。
「ええ、あたしも見ました。すごかったですね!あたしはほこりまみれにはなりましたが、幸いケガをしないで済みました。」

次の日。
世界制服屋警備部の近藤警監が勤務する警監室に、長井警士はいた。
もちろん目の前には近衛部隊所属の内藤警正、首塚警正もいる。
「東宝映画か、円谷プロダクションのような話だったな。」
内藤警正が言うと、首塚警正がつぐ。
「身長を自在に換えられるとは知っていたけれど、あんな特撮ヒロインのようなことができるなんてねえ……。」
「この能力を使うことになるとは、夢にも思いませんでした。」
長井警士が言うと、近藤警監がしめる。
「次回ああいったことがあった場合は、ためらわず、即座に対応してもらいたい。もちろん、警備部・近衛部隊の関係はわからないようにしてだがな。」

自由自在に身長を換えられる異星人、長井美幸。彼女がその能力を使って戦うことはまたあるのか。正体を知られてしまう日が来るのか。それは、神のみぞ知るである。