粉砕伝説ジュリバン外伝
外伝第39話
〜活躍!双子のアマゾネス〜
陽光うららかなある日。守谷ジュン警士と守谷衛子警長のコンビは、臨海副都心で開かれたコスプレ・イベントの警戒に出動していた。
ジュンは、自らの体を武器とも防具ともする格闘家。衣装は、柔道着をもとにした、露出の多いデザインのもの。名作アクションRPG、『ブランディッシュ』シリーズの格闘家、アンバー・ガルシアを意識している。
衛子は自らの鍛えた筋肉も防具であるとばかり、下着のようなデザインの「見せる鎧」姿の女戦士のアマゾネスのコンビ。もちろん、二人とも盗撮対策で露出部分は肌色の体にフィットする素材で覆ってある。
会場に散っている警備部の面々は、制服姿もいれば、私服姿もある。制服姿のいかめしさを半減したいという主催者側の声に答えたのだが、警備部の親会社がコスプレ衣装の製造販売をする世界制服屋だから…というのもある。
会場前の人員点呼のとき、全員のバラエティーに富んだ姿を見て、関係者のジュンや衛子でも驚いてしまった。
「うわ、制服博覧会だよ。」
ジュンが言うと、衛子が返す。
「あそこにいる、旧制服姿の婦人警察官はあずさじゃない?」
二人と同期の森川あずさ警士は、昭和51年式婦人警察官制服姿。
「よ、あずさ。」
「あら、ジュンに衛子。今日は二人ともアマゾネスなんだ。」
あずさの言葉に、衛子が返す。
「そ。あたしは戦士で、衛子は格闘家。二人とも私服警戒班なんだ。」
「あたしも私服班なんだ。制服なのに、警備部のものでないと今日は私服扱いなんだって。」
あずさの言葉に、小柄なメガネっ娘の各務まゆみ警手が返す。
「美幸はウルトラマンのアンヌ隊員で、義衛君は相変わらずよ。」
特撮物好きの長井美幸警士は、『ウルトラマン』シリーズのヒロイン、アンヌ隊員に扮している。
「特撮物が好きなのね、美幸は。どうせだったらあずさが辻本夏実、美幸が異姓同名の小早川美幸になって、原作版『逮捕しちゃうぞ』の夏実・美幸コンビやればいいのに。」
衛子が言うと、美幸は返す。
「それは、夏美と美雪の、一字違いのコンビに任せるわ。二人もあたしがアンヌ隊員やったほうがいいって言ってくれたし。」
「守村は、相変わらずだな。」
ジュンが言うと、守村は返す。
「別のもののほうが、よかったかい?」
昔気質の一刻者、「融通の利かない男」守村義衛警士は、往年の国鉄の灰青色背広型の制服姿。制帽の鉢巻は、赤帯に金線2本の駅長のものだ。
「まねできないわね、ジュンと衛子は。」
あずさが言うと、守村が次ぐ。
「半分ぐらい、筋肉を分けてもらいたいぐらいだよ。」
一同が雑談しているところへ、隊長の近藤衛恵警監、副長の内藤武士警正がやってきた。
近藤警監は、アニメ版『逮捕しちゃうぞ』の辻本夏実を意識しているので、ワイシャツ袖まくりで生足。ワイシャツが体にフィットしているから、筋肉質のボディがわかる。彼女もジュンや衛子に負けないぐらいの筋肉を持っている。内藤警正は、アニメ版の辻本夏実のお相手、寡黙な山男、東海林将二といきたいが、今日は背広型4つボタンの警備部の制服姿。もっとも警備部の制服は一世代前の警察官の制服に似せてあるから、帽章と階級章を換え、警備部の記章をはずせば、昭和43年制定の男性警察官制服で通る。
内藤警正の伝達事項が終わると、近藤警監が訓辞する。
「最近…というよりこの数年来、コスプレに対する理解が進んだ一方、風俗産業も目をつけ、盗撮、悪質なカメコ、その他種々のトラブルが発生している。悲しいかな、同人系イベントでは、コスプレを禁止にするところもあり、あのコミックマーケットでもカメラ持ち込みを規制せよとの声が出ている。我々は、悪質な奴らを摘発、断罪することによってコスプレイヤーが安心して露出度の高いヒロインキャラに扮することができるようにしなければならない。諸君の活躍に、期待している。」
衛子とジュンが警戒しつつパトロールしていると、ひげ面も精悍な、報道班員の腕章を巻いた、階級章のない98式軍服姿の姿のカメラマンに声をかけられた。
「おや、衛子さんにジュンさん」
見れば、近所の岡部写真館の3代目、岡部慶四郎だった。岡部は証明写真の関係で警備部にしょっちゅう出入りしているから、顔なじみでもある。
「慶四郎さん、今日はお仕事、それとも趣味?」
衛子が言うと、岡部は返す。
「仕事と趣味、渾然一体といったところですかね。何だったら、一枚撮りましょうか?」
「えっ、ありがとうございます!」
岡部のカメラに収まったほかに、数人に撮られた。その中にはレイヤー撮影で有名なものもいたから、二人とも悪い気はしなかった。。
カメラマンたちと別れてから数分後、こんどは『ドラゴンクエスト3』の女戦士のレイヤーに話しかけられた。
「鍛えてますねえ。もしかしてボディビルダーですか!?」
という彼女も、引き締まった体つき。ジュンが、いつもの男言葉は出さないように注意しつつ、
「あたしら、ガードウーマンが本業でしてね。あなたも鍛えているようですが、なにかやられています?」
と言うと、彼女は返す。
「フィットネスモデル、やっているんです。」
「なるほど。」
衛子が次ぐ。
「適度に引き締まった体で、無駄のないボディですね。」
しばらく悪質なカメコ対策や、無理しない鍛え方などを話し、再会を約して別れた。
「さっきの彼女だと、技で戦うタイプって感じかな?」
衛子が言うと、ジュンが次ぐ。
「俺らは、バカぢからだけが頼りってところだな。バトルアックス振り回すような。」
「あ、言ったわね。あたしは技もあるわよ。」
こんな会話をしつつ巡回していると、後ろから視線を感じた。
「視線…、感じない?」
衛子が言うと、ジュンは返す。
「出やがったな、盗撮野郎。」
「決めつけるもんじゃないわ。声をかけるきっかけが見つからないだけかもしれないわよ。」
さりげなく衛子が振り向くと、挙動不審の男がいる。残念ながら彼女の見立ては外れ、盗撮している。
そこへ、一段高いところにいたあずさから無線が入る。
「二人の背後に盗撮カメコ発見。これからあたしたちも警戒態勢に入る。」
「聞いたな、衛子。同時に押さえるぞ。」
「了解。」
「1…、2…、3…!」
同時に振り向いた瞬間、例のカメコは気配を察し、他のレイヤーやカメラマンをかきわけ逃げ出そうとした。
「こいつ、待て!」
「盗撮カメコよ、逮捕して!」
「なんだって!?」
「男の風上にもおけん奴、成敗してくれる!」
守村駅長、森川巡査、各務巡査、長井隊員…といった仲間や主催側の警戒要員も追うが、人混みにまぎれて奴は逃げ、どんどん引き離される。
衛子が言う。
「どうしよう、このままだと取り逃がす!」
ジュンがふと目をやったところに、鉄柵があった。
いちかばちかだ。
「どうぉりゃあっ!」
力一杯投げつけた柵は狙いあやまたず、カメコの目の前に落ちた。
いきなり数十キロはある柵が降ってきて、びっくりした奴が腰を抜かしたが、衛子が近づいてくると、ふらふらと立ち上がり、なおも逃げようとしたので、衛子は素早くボディタックルを食らわせ、怪力でねじ伏せる。
「東京都迷惑防止条例違反の現行犯で、逮捕する。」
盗撮カメコは、すぐに所轄である深川署に引き渡された。
余罪を追及すれば出るわ出るわ、あっちこっちのコスプレイベントで盗撮していたことがわかった。
それから数日後。ジュンと衛子が勤務している守衛所では。
雑誌を読みながら、ジュンが言う。
「やれやれ。事情を知らない人には面白かったのかもしれないがねえ…。」
彼女が手にしているのは、近藤警監からもらったコスプレイヤー向けの雑誌。これには「双子のアマゾネス、盗撮カメコを現行犯逮捕」という見出しがついている。内容は警備部の面々と衛子、ジュンの活躍で、「盗撮する奴は嘆かわしい」という近藤警監のコメントや、「男の風上に置けない奴だ!」といきり立つ守村の談話も載っているし、裁判記録などのまじめな部分もある。
衛子が次ぐ。
「アマゾネス姿で一件書類作成にならなかったのは、よかったけど。」
現行犯逮捕した場合、警察官に身柄を引き渡したあとで、逮捕したほうも一件書類を作成しなければならない。場合によっては人の一生や人生を左右しかねないし、個人の自由を一瞬とはいえ押さえたのだから。
もちろん現行犯逮捕後の一件書類作成は仕事柄慣れっこだが、着替えなければ、アマゾネス姿で警察署の取調室へ行くことになりかねなかった。もちろん、他の人々がつないでくれたのと、担当刑事が待ってくれたので、実現はしなかったが。
担当刑事の前で、アマゾネスが現行犯逮捕の瞬間を説明している姿を想像して、衛子はくすりと笑う。
「さぞかし珍妙な光景になっただろうね。いつだったか守村さんとあずさがパトロール中に引ったくりを現逮したとき、義衛君は詰襟佩刀装備だったから、タイムスリップしたみたいだったね。」
ジュンは返す。
「51年式制服のあずさは、モデルチェンジ前夜って感じだったな。だけど全くもってなげかわしい連中だよな、盗撮するなんて!」
衛子が言う。
「全く。だけど…」
「だけど、何?」
「コスプレして容疑者を追いかけて、取り押さえたとき、なんだか本物のアマゾネスになったような気がしたな。」
衛子の言葉に、ジュンは返す。
「それが…、コスプレの醍醐味なのかもしれないな。」
「そうなのかもね。」
コスプレの醍醐味を知った衛子とジュン。次回は制服姿か、鎧姿かはわからないが、双子のアマゾネスは、コスプレ会場に現れる。会場の悪を退治するため……。