粉砕伝説ジュリバン外伝外伝第45話〜夏休みだ!

粉砕伝説ジュリバン外伝
外伝第
45
〜夏休みだ!!〜

熱川進、清水清司、守谷衛子、守谷ジュン編
守村義衛編
各務まゆみ、近藤衛恵、内藤武士、森川あずさ編
遠藤恭四郎編

365日が勤務の世界制服屋警備部だが、みんなそれぞれの都合にあわせ、休みを取る。今回はいつもの面々の夏休みのある日を、ご紹介する。


熱川進・清水清司・守谷衛子・守谷ジュン


江田伊九丸作
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青い空と白い雲。ある夏の日。熱川、清水、衛子とジュンは海水浴に来ていた。
四人とも180センチオーバーの長身で鍛えたボディだから、ごった返す海水浴場では、ひときわ目立つ。
というわけではないが、熱川・清水ペアは短パン、ジュンは鍛えたボディーを見せるかのようなビキニスタイルなのに対し、衛子はパレオつきのハイレグと露出を減らしている。似ているのは顔と体格だけの双子の姉妹の好対照だ。
ひとしきり泳いで休憩していると、何を思ったか熱川が、
「海水浴といったら、スイカ割り!」
と言いながらクーラーボックスからスイカを取り出すと、清水が返す。
「誰が持ってきたと思ったら…、お前だったのか。」
ジュンが次ぐ
「結構大きいな、四人じゃあ食べきれないぜ。」
衛子は、にこりと笑っていう。
「あまったら、周りにおすそ分けすればいいわよ。誰から割る?」
周りには、親しくなった子供たちがいる。ジュン、衛子、熱川、清水は頼りになるお兄さん、お姉さんなのだ。
清水が、木刀を手にして返す。
「じゃあ、わたしから。」
木刀を手にした彼は、目隠しをして10回まわって、割りにかかる。
「そっちそっち…」
「反対だって、そっちは〜。」
声を頼りに清水が進んでいく。目隠しをしていても剣士のカンで、一回目で割れそうな位置に来た。
一同の心の中には、こんな思いがよぎる。
(一回で終わるのか…)
(つまらないわねえ…。)
「そこだ!」
べこっ。
一同の願いが天に通じたのか、技で翻弄し、ダメージをじわじわと与えることを身上とする清水の剣では、一撃でスイカを割ることはできなかった。
「ううむ…残念。一撃必殺とはいかなかったか。」
目隠しを外しながら清水がいうと、熱川が次ぐ。
「一回で終わらせちまったらつまらないだろうが。ほら、今度は俺がやるよ。」
「なんだかんだいって一番やりたいのは、熱川君じゃないの。」
衛子が言うと、彼は、苦笑して返す。
「ま、そんなとこかな。よ〜し、今度は俺が割ってやる。」
今度は熱川が、目隠しをして割りにかかる。
「そのまままっすぐ、まっすぐ…!」
「あと五メートルってところだな。」
「ここだな、よし、うりゃぁ〜!!」
ぼこっ。
今度こそスイカに命中。一撃必殺で、見事に割れた。力技の彼らしいと言えば彼らしい。
それを見て、周りからは驚きの声があがる。
清水は一言。
「直撃したな。」
目隠しを外し、熱川は胸を張る。
「どんなもんだい!」
「外したら、俺が一撃必殺の拳で割ってやったのに…。」
ジュンが残念がると、衛子は割れたスイカを切り分け、子供たちにわたしながら次ぐ。
「ジュンがやったら、こなごなになっちゃうわよ。あんた加減を知らないもの。」
とそこへ、この暑いのに長袖長ズボンに帽子、長靴姿の守村義衛がやってきた。釣りの完全武装だ。
「なぁに、こなごなになったらエサにするよ。」
「スイカが魚のエサになるの…?」
衛子が言うと、守村は次ぐ。
「石鯛を狙うときに使うんじゃ。少しわしにも分けてくれ。食べながら使おう。朝飯は、石鯛の刺身じゃ。」
「期待しているわよ、守村さん。」
「なぁに、任せておけ。」
釣りざおを肩にかけ、守村は磯へ向かう。
その姿を見送りつつ、四人はスイカにかぶりつく。
「やっぱり海水浴のスイカ割りで割ったやつは、普通に切って食べるのより、うまいよな〜。」
「そうねえ〜」

守村義衛

長袖長ズボン、帽子に長靴、救命胴衣の完全武装で、守村は磯で石鯛を狙っている。
「日の出る前から暑いのう…。」
エサにするスイカは、昨日熱川が割ったものだ。それを食べながら、彼は灯台の光がある夜明け前からひたすら、釣り糸をたれている。
「お、かかったぞ!」
引きはきつい。急いでリールを巻けば、やはり大物。40センチはありそうだ。
「見事な石鯛じゃのう…。」
急いでクーラーボックスに収め、宿へもどる。時計はまだ6時前。今なら朝飯にまにあう。
「あの四人に、自慢したけんな。」
長靴を脱ぐのももどかしく四人の部屋へ行くと、みんな起きだしたばかりだった。隣りのリトルリーグの子供たちが騒ぎ出して、目がさめたのだ。
「昨日言ったとおり、石鯛を持ってきたぞ。」
守村が部屋に入ると、四人はたたき起こされたばかりで半分寝ており、
「鯛を取ってきた…?」
「冗談でしょう…。」
と半信半疑で、ジュンに到っては、
「夢でも見ているんじゃないのかぁ…?」
と布団に戻ってしまったから、守村は、クーラーボックスから取り出し、いう。
「ほら、よく見い。」
目の前には、立派な石鯛が。
「ええっ。」
「ほんとに持ってきたの!?」
衛子が言うと、熱川が次ぐ。
「なかなか大物じゃあないか。」
「これを釣りあげるのには苦労したよ。宿の大将に話はつけてある。朝飯には刺身が出るぞ。」
彼の釣った鯛は、いつもは漁に出る民宿の主人も思わず驚くような立派なものだった。魚拓を取ったあとで、さっそく刺身におろしてもらった。
「「エビで鯛を釣る」じゃあなくて、「スイカで鯛を釣る」ね。」
衛子が言うと、ジュンが次ぐ。
「そうそう。」
朝飯を済ませると、四人は海へ向かい、彼は磯に戻る。
「最近磯釣りは、やっておらんかったからな。」
釣り好きの守村義衛は、久方ぶりに磯で釣糸をたれる。

各務まゆみ・近藤衛恵・内藤武士・森川あずさ

「暑いわねえ…。」
各務まゆみは、東京ビッグサイトの中にいた。
今日は全国区の同人誌即売会、コミックマーケットの二日目、猫好きの彼女はペット関係の西館で、サークル参加している。売り子は猫好きの桐田かおる、村瀬頼子。小柄メガネっ娘トリオだ。
「猫ちゃん連れてきたら、暑くて目を回すかもしれませんねえ…。」
頼子が言うと、かおるが次ぐ。
「人間も目を回すわよ…!」
三人が汗を拭きながら座っていると、声がかかった。
「まゆみ〜。どう、売れ行きは?」
「あっ、あずさ。売れ行きはぼちぼちよ。」
様子を見にきたのは、彼女とペアを組む森川あずさ。今日は私服姿で、手にはトートバッグを下げている。
「コミケと言うと、三日目のエロ同人の連中が話題に出るけれど…、ちがうのね。」
あずさが言うと、まゆみは返す。
「作品を心から愛する人や、同好の士との交流が本来なのよ、コミケットは。」

一方そのころ、内藤・近藤の二人は、コスプレコーナーにいた。
「すごい混雑ね。」
「警備の参考にしようと来たんだがねえ…。」
海風があって外より気温は低いが、コスプレイヤーとカメラマンでごった返していて、暑い。コスプレといっても、このシリーズを読んでいるかたなら先刻ご承知、ゲームやアニメのキャラに扮するだけが、全てではない。軍装や鉄道などの制服系レイヤーもいる。
いつもの衣装の警察官制服は、コミケットのコスプレ規約に引っかかるので、二人ともカーキ色の鉄道省時代の機関士仕業服にしていて、遠くではユリイカの常連の宗村が、同時期の詰襟制服姿でいるのも見える。
「その制服は…、機関士ですか?」

参考、機関士仕業服
声がしたので衛恵が振り返ると、
JRになってからの接客職種の半袖シャツ姿の男がいたので、彼女は返す。
「鉄道省時代の、機関士・機関助士の作業服です。戦時中の人手不足で、女子機関助士が乗務したころのものです。」
「へええ…、女子機関助士…。そういえば、最近は女性の運転士が出たと話題になっていますが…。」
機関士の内藤がいう。
「鉄道省の運行部門では、炭水手といった支援部門や機関助士には女性がいましたし、車掌は女性がほとんどという時代です。それに広電は動員学徒や女子挺身隊出身や正規社員として、女子運転士が勤務していましたね。」
近藤が次ぐ。
「機関士と機関助士、運転士と車掌という形で生死をともにした二人が、戦争が終わってから結婚するなんてケースも、あったんですよ。」
コミケットは、徹夜組や三日目のエロ同人誌ばかりが目を引いているが、本来は同好の士が集まるものなのだ。

遠藤恭四郎

遠藤恭四郎は、数十年ぶりに思い出の地へ戻ってきた。
「変わってないなあ…。」
さすがに蒸気機関車の引いていた列車は電車に、駅は委託になっていたが、九十九里の町は、あのころの面影を残していた。
駅前通りを歩いていくと、町役場の隣りにある駐在所を見つけ出した。
「ここも変わっていない!」
平屋で木造の駐在所は、パトロール中らしく誰もいなかった。表には自家用車が止まり、事務室の内装や備品は現代風になってはいるが、たたずまいはあのころと変わっていなかった。
昭和20年8月15日を、恭四郎少年はこの町で迎えた。
駐在巡査だった父親は、いつもの勤務に加え、対空監視哨の指導もしなければならず、本土決戦が近くなると、この町にも米軍が上陸する公算が大きくなったので、老人や女子供を避難させ、国民義勇軍を率いて警察警備隊とともに米軍と戦う計画の作成までもやらなければならなかった。
彼は空を仰ぎ、つぶやく。
「あの日も、暑かった…。」
雲ひとつない空を飛行機が、飛行機雲を引きながら飛んでいる。
あの日も、雲ひとつない空を、どこのかわからないが飛行機が飛んでいた。
恭四郎少年は、家族とともに駐在所で終戦の詔勅を聞いた。
雑音だらけで何がなんだかわからなかったが、まわりの大人の行動で、なんとなくだが、日本が戦争に負けたことだけは、わかった。
周囲が茫然自失とする中、それでも父親は、昼の巡回に出かけていった。

らすかる 作
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「わしは国内治安の要、銃後の戦士じゃ。」
数日後、平素寡黙な父親は、恭四郎少年を事務室に呼び、灯火管制の幕を電灯から外し、部屋を明るくしてから言った。
「……日本は、戦争に負けた。軍隊がなくなったいま、国を守ることができるのは、警察だけになった。お前は警察官になるかはわからん。だが、これからどうなっても、わしの生き方を忘れなければ、言うことはないよ。」
敗戦の日、終戦の詔勅の中もダイヤ通り動きつづけた9600型蒸気機関車と鉄道員の姿を見て乙松少年が鉄道界に進んだのと同じく、終戦の日もいつものとおり佩刀をつり、巡回に出かけた父親の姿を見た恭四郎も、警察官になった。父親は定年で辞めるとき、やっと名誉進級で巡査部長になったが、彼は警視になり、いまは警備会社の実質的な社長となっている。
「国内治安の要…あの言葉で、俺は、警察官になった……。」
バイクの音がしたので我に返ると、ちょうど巡回から、駐在所勤務の警察官が戻ってきた。夏服のポケットの上にある階級章は巡査長、三つボタン背広式の昭和32年式から袖を通しただろう人だ。
一瞬彼が、あの日の父親に重なった。
「どうかされましたか…?」
昼日中、誰もいない駐在所の前でたたずんでいれば、何か事件があったかと思われても仕方がない。
「いえ、特に事件というほどのものはないですが、わたしの父親が、この駐在所に勤務してましてね…、いやあ、変わっていませんね。ちょうど60年前の今日、ここで終戦の詔勅を聞いたんですよ。」
遠藤が言うと、彼は返す。
「そうだったんですか。まあ立ち話もなんでしょうから、よかったら涼んでいきませんか?」
「それでは、お言葉に甘えて…。」
「わたしは8月15日を、外地で迎えました。親父は朝鮮の釜山で巡査をしていました……。」

それからしばし、二人は少年時代からはじまり、制服を着て街に立ったころの思い出話に花を咲かせた。
遠藤恭四郎の思い出小旅行は、思いがけない収穫があったようだ。