粉砕伝説ジュリバン外伝
第52話
〜EF63〜
世界制服屋で取り扱っている制服のカタログ写真を撮るべく、今、俺は鉄道公園にいる。
紺色の仕業服姿の宗村高光と高村宗光は、機関士・機関助士として9600型機関車の運転台に乗り、8620型機関車の脇では、守村義衛が鉄道省時代の詰襟制服、森川あずさが女子現業職員の制服姿で、タブレットの受け渡しをやっている。
静態保存の機関車でも、今まさに汽笛を鳴らし、力強いブラストと煙を吐いて走り出しそうに見せる演技力だ。
俺は、国鉄の三つボタン背広型の機関士制服姿。機関士として、「峠のシェルパ」の愛称で知られるEF63を背景にして写る。

信越本線横川駅、これから日本最大の傾斜、66.7パーミルの難関碓氷峠を越えるため、165系と連結するあいだ一服つけている…
そんなシチュエーションだ。
EF63を見ると、胸が一杯になってくる。
EF63は、ただ一つの目的、信越本線横川-軽井沢間、碓氷峠を越えるためだけに、作られた。
時の流れで碓氷峠越えがなくなった日、「峠のシェルパ」は失業した。横川機関区にいたEF63は、交通博物館などに行けた幸運なものを除けば、スクラップになるしか道はない。
しかし、9600型、8620型はちがう。
大正時代に作られた旅客機8620型、貨物機9600型は、蒸気機関車の代名詞D-51、C-62のように華やかではないが、北は北海道から南は鹿児島まで、日本中の機関区に在籍し、幹線、亜幹線、軽便路線と区別なく、貨物列車も引けば、旅客列車も引いた。
1973年に蒸気機関車の営業運転が終ったあとも、入替用として、最後の最後まで、動きつづけた。
さまざまな人々を乗せ、9600型、8620型は走りつづけた。
日本国民と苦楽を共にしたといっても、言いすぎではないだろう。
女帝を守ることに全てを賭けた俺は、EF63に似た存在。
俺は、タカミーナ陛下を守るため、存在している。
衛恵をはげますため、ほかに守るものがあると言ったこともある。
それは、9600型、8620型のような生き方だろう。
女帝に殉じるのは、EF63のような生き方になる。
たった一つの目的に殉じる、EF63のような人生がいいのか。それとも最後の最後まで走りつづけた9600型、8620型のような人生がいいのか……。
正直な話、どちらがいいのか、未だにわからない。