粉砕伝説ジュリバン外伝第59 話〜3月14日〜
粉砕伝説ジュリバン外伝
第59話
〜2月14日、3月14日〜
365日が仕事の警備業。年末年始もバレンタインも、ホワイトデーも関係ない……。
といってもそれは、制服姿で街に立つときのみ。休憩時間や勤務の前後には、それらしいアクションがある。
〜2月14日〜
熱川進、清水清司、園田方也の三人が、制服に着替えるべく更衣室のロッカーを開けた瞬間、熱川、清水のロッカーから、色とりどりに包装された小箱が、どさっと落ちた。
「な…、なんだこりゃ!?」

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熱川が言うと、清水が、拾ってみて返す。
「バレンタインだから、だろう…?」
変身してヒーローになってもおかしくない、とも言われる熱川、清水のふたりは、女性陣の間で人気である。箱には、「熱川警曹殿へ」、「いとしの熱川様」、「アッキーへ」のほかに、「ハーロウ様へ」、「ハーロウ警曹殿へ」とあるので、近衛部隊のも混じっているようだ。
清水も、同じような箱書きだ。
「お返しなんかしないぜ、俺は。」
熱川が言うと、清水は返す。
「お前らしいな。だけど、無視するわけにはいかないぜ…。」
「人気者は、大変だねえ。」
「うるせえ!」
そういう園田のロッカーには、本名からの一つが入っている。
彼は熱川、清水のやり取りを眺めつつ、思う。
(量より質だよ、量より質。)
一方その頃、女子更衣室では。
守谷ジュンのロッカーから、バレンタインの包みの小箱が複数個出てきた。
「な、なんで俺に…。俺は女だぞ。」
「ジュンは男勝りだからね〜。女の子の間では人気なのよ。」
これは双子の妹、衛子。
彼女の言うとおり、男勝りのジュンは、警備部の女性陣の間で人気がある。
「お返ししなきゃあいけないのかよ…。やだなあ〜。」
「大変ね、男勝りは。」
こういうのは、長井美幸。
彼女は、衛子とジュンのやり取りを横目に、ネクタイを締めながら、思う。
(本名の彼は、受け取ってくれたかな?)
〜3月14日〜
森川あずさの机の上に、紙包みが置かれていた。
開けてみると、「北海道名産 石炭飴」と書かれた黒い飴が入っている。名前が示すとおり、石炭の塊のように角ばっている。
(守村君からだ…。)
北海道の採炭地鉄道の駅長の生き方に憧れる、「昭和の男」の守村らしい選択だ。
…
2月
14日、本日、異常なし…。
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(味はニッキ飴で好きなんだけど、大きいのがあるから食べづらいのよね…。)
石炭に似ているから、石炭飴。他の飴のように四角や三角、丸ではない。固まった飴を砕いてそのまま袋に入れているので、ものによっては3、4センチ角で、口の中を切ってしまう事もある。
(「昭和の男」らしい、荒削りで渋い選択ね。あとで、金づちでたたいて小さくしておかないと。)
あずさは、机の引出しに石炭飴をしまう。
一方、対面で座る長井美幸の机の上には、きれいにラッピングされた包みが一つ、置かれていた。
「そうそう、今日は3月14日だったっけ。」
仕事が仕事だけに、イベントの日も365日中の1日。机の上の包みを見るまで、今日がホワイトデーだったことをすっかり忘れていた。
「誰からだろう…?」
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開けてみると、中身はキャンディボックスだった。手紙も入っているので見ると、こう書いてあった。
「いつものところで、17:00に待っている。 S.K」
イニシャルしか書いてないが、独特の書体で誰が書いたかわかる。ヴァレンタインに本名のチョコを渡した、彼からだ。
今日は幸い、お互い日勤の日。事件や事故がなければ、17時にあがれる。
そわそわしながら、彼女はそのときを待つ。