粉砕伝説ジュリバン外伝
第61話
「伝説の勇者」
春うららかなある日。熱川進、清水清司、守谷衛子、守谷ジュンの4人は、RPGのヒーロー、ヒロイン姿、傭兵ハーロウ・アイゼンハート、騎士エフスキー・ラズーム、剣士エーコ・ガーディアン、格闘家ジュン・ガーディアンに扮し、一般参加のコスプレイヤーとして、中世ヨーロッパの街並みを模したテーマパークで開かれたイベントに参加していた。
革ジャケットを羽織っただけの上半身、鍛えたボディも防具の一つの「傭兵隊長」ハーロウが、バトルアックスを肩に担ぎ、歩きながら、
「仕事じゃあないって、気楽でいいな。」
と言うと、白銀の鎧姿の「騎士隊長」エフスキーが返す。
「何年ぶりだろうな。」
いつもはこの4人、世界制服屋警備部の警備出動としてコスプレしているが、今日は仕事とは一切無縁、趣味のコスプレだ。
今回は、1920年代以前の衣装か、「剣と魔法の世界」のRPGのキャラクターしかコスプレができない。よってあっちこっちにその手のキャラクターに扮したレイヤーがいる。
二人が顔なじみのレイヤーと別れたところに、緋色のマントに、守るべきところはしっかりガードし、見せるべきところは見せる、レオタード風の鎧姿のエーコ、自らの体を武器とも防具ともするので、動きやすいデザインの、道着をアレンジした衣装のジュンが、街並みの方からやってきた。
「あら、アッキーにフッキー。あたしたちはお昼だし、一休みするんだけど、二人はどうする?」
エーコが言うと、ハーロウが返す。
「なんだよ、そのアッキー、フッキーって。」
「RPG風のあだ名だよ。なりきらなきゃあね。」
これはジュン。
柱時計を見ると12時近いので、一同は休憩する。
食堂は、中・近世ヨーロッパの宿屋を模したものだが、出てくるものには和風もある。ジュンはスパゲティ、エーコとエフスキーは定食にしているが、ハーロウは、天丼。
「RPGのキャラクターがご飯物を食べるなんて、違和感があるな。」
ハーロウが言うと、エーコが返す。
「侍といった、日本や東アジア世界をベースにしたキャラクターだったら、懐かしい味だと言うかもしれないわね。守村君あたり、異国の剣士守村義衛として出てくれたらいいのにね…。」
「あいつがか…。確かに、絵になるからなあ…。」
しばらく4人で話していると、なにやら店の外がやかましい。
「イベントかな、入場前にもらったパンフレットに、「驚く事がある」と書いてあったから。」
エーコが言うと、ジュンが返す。
「それにしては、騒がしすぎやしないか。」
「行ってみよう。」
「何かあったのかも。」
職業柄、騒ぎがあると気になる。4 人が行ってみると、現場ではミノタウロスが一般客や他のコスプレイヤーを攻撃していて、主催側の警備スタッフは防戦一方だ。
「なにっ、ミノタウロス!?」
「RPGの世界を模しているといってもねえ……。」
ハーロウはエフスキー、エーコ、ジュンの袖を引き、小声で言う。
「よお、エフスキー。まさか、秘密結社世界征服屋がからんでんじゃあないだろうな…?」
遊園地で開かれたコス・イベントで、ハンター率いる秘密結社世界征服屋の面々が暴れた事件があった。それに、秘密結社世界征服屋には、ミノタウロスをベースにした怪人、タウロ・タングスがいる。
エフスキーは返す。
「いや、そういう情報は、一切入っていない。」
エーコが次ぐ。
「世界征服屋が関わっているかはわからないけど、ミノタウロスを放っておくわけにはいかないわよ。退治しないと。」
「よしわかった。」
4人は、ミノタウロスの注意を引くべく、タンカを切る。
「やい、ミノタウロス。タカミーナ・エンパイアの狂戦士、ハーロウ・アイゼンハートが相手になってやる!」
ハーロウがバトルアックス片手に言うと、エフスキーが、
「青服騎士団団員、エフスキー・ラズーム。我と思うものは相手になるぞ。」
といって、手袋を投げつけた。決闘のときのしきたりだ。
ジュンとエーコの姉妹が次ぐ。
「親の仇を探し、剣の腕を練り磨く、剣士エーコ・ガーディアン。受けてみよ、正義の刃!」
「同じく、親の仇を探すとともに自分より強い相手を探す格闘家、ジュン・ガーディアン。受けてみよ、正義の拳!」
ミノタウロスも負けてはいられず、タンカで返す。
「なにをごちゃごちゃ訳のわからない事を言っている。お前らからやっつけてやる!」
事情を知らない人々からは、新手のショーかなにかと勘違いされているのか、拍手や声援が。
ミノタウロスがバトルアックス片手に突進してきた。すれ違いざま、ハーロウのバトルアックスが一閃する。
怪力同士の二人がぶつかる。お互い、発達した筋肉が防具の一種である。見る人が見たら、たまらないショットかもしれない。
ハーロウの一撃を交わしても、エフスキーとエーコの弱点攻撃と、ジュンの一撃がある。しかし相手もさるもので、なかなか隙を見せない。
しばし、RPGのボス戦を思わせる、4対1での戦闘が続いたのち、ハーロウが行動に出た。
ミノタウロスのバトルアックスが一閃するのをすばやく交わし、胴に一撃。
「うをっ!」
ミノタウロスは片膝をつき、うずくまる。
「やった!」
「すごい、かっこいい。」
「RPGのキャラクターみたいだな。」
事情を知らない人たちからは、やんややんやの大喝采
「どうだ、狂戦士・ハーロウ・アイゼンハート、伊達や酔狂でこの名を名乗っているんじゃあないんだぜ!」
ハーロウが決めゼリフを吐いたところへ、いきなりマイクを片手にした、吟遊詩人と宮廷道化師に扮した司会者が、4人をステージに上げてしまった。
「あなた方はわが街を救った、伝説の勇者です!」
「はいー!?」
エーコが言う。
「びっくりするイベントって、これのことだったの!?」
ジュンが返す。
「こういうんだったら、放っておけばよかったよ…。」
…というわけで、4人はミノタウロスから街を救った、伝説の勇者にされてしまった。
ミノタウロスは会場が用意した、びっくり企画だったのだ。
一連のイベントが終わり、ステージから降りたあとで、ハーロウが、
「この伝で他の連中やハンターが騒ぎを起したら、たまったもんじゃあないな。」
というと、エフスキーが返す。
「ああ、まったくだ。」
しかし、ジュンとエーコは、まんざらではないようだ。
「いつもは制服姿での時間稼ぎのアクションだけど、たまには、こういうのもいいかもしれないわね。」
「たまには、目立つのも悪くないかな。」
警備部の面々のアクションは、事件か戦隊物ショーの時間稼ぎがほとんどだが、今回は事件も何もない、RPGのワンシーンを思わせる立ち回り。
たまには、こういうのもいいのかもしれない。