粉砕伝説ジュリバン外伝外伝第62話〜世界制服屋食堂部〜

粉砕伝説ジュリバン外伝
外伝第62話
〜世界制服屋食堂部〜


長らく神田にあった交通博物館が大宮へ引っ越すことになったので、守村義衛、森川あずさの二人は見納めに行ってきた。
「交通博物館が鉄道博物館になると、かの後藤新平が博物館と職員養成所を作れと言ったときの形に戻るわけでもあるな。」
「義衛君は、後藤新平が鉄道院総裁で、秋葉原が物流の中心地だったころを知っているんでしょ。そのころの鉄道博物館は、どうだったの?」
「ま〜た人を年令不明にする〜。」
「昭和の男」の異名をもつ守村と連れだって歩いていると、自然、電気街側の雑踏を避け、水運と鉄道の交差地点、物流の中心地だったころの問屋街のたたずまいを残す昭和通り方面へと足が向く。今日は土曜なので、問屋は小売も兼ねる店をのぞいて、閉まっている。余談だが、世界制服屋、世界制服屋警備部本部のあるかっぱ橋商店街も問屋街なので、土日や平日の午後
5時以降に開いている店は少ない。
「秋葉原は変な連中の集まるところだと思われているけれど、本来は問屋街だったのよね。」
昭和通り側に多い、昭和
20年代〜40年代に建てられた家並みを見回しながら森川が言うと、守村は渋い顔で返す。
「だが、最近の再開発で変な連中が昭和通り側にも来ている。不愉快千万な話だ。何がメイド喫茶だ。」
「古風なあなたには、ユリイカのような純粋喫茶のほうが似合うわね。ところで義衛君、メイド喫茶で思い出したけど、おなかがすいたわね。何か食べない…?」
森川が言うので時計を見てみると、針はいい時間を指している。
目の前にある店を指差し、守村は返す。
「あの店にしよう。」
店は古くからあるといった感じで、チェーン店でも、最近できた流行の店でもない。
「行きつけなの?」
「いや、今目に飛び込んだ。当りか外れかは、わからん。」
二人がものは試しと入ってみると、店内はけれんみのない渋い内装だったが、出迎えたウエイトレスに驚かされた。


「…どうなっているんだ、ここ?」
「チェーン店では、なさそうだけど…。」
「いらっしゃいませ。お二人ですか。おタバコはお吸いになられますか…?」
二人に気づいてやってきたウエイトレスは、胸を強調する詰襟ブラウスにミニスカートのデザインで知られる、アンナミラーズのユニフォームだ。その奥で注文を聞くのは、明治時代の女学生を意識した矢絣の羽織に海老茶式部の袴、編上げ靴の馬車道。さらには白いブラウスに青い巻きスカートの「青きアンミラ」の異名をとる神戸屋キッチン……と、さまざまな店のウエイトレスのユニフォーム姿なのだ。
「どうする…?」
森川がつつくと、守村は真顔で返す。
「当りかはずれか、見きわめる。外れだったら、わしが責任を持って全額出す。」
責任を持って全額出す…という守村の言葉に、森川はくすりと笑う。
しばらくたって、注文を聞きに来たアンナミラーズのオレンジ色ユニフォームのウエイトレス―ネーム・タグには
Sinobuとある―に、森川が尋ねる。
「ここは一体、どういうお店なんですか?みんな他の店のユニフォーム姿ですが…。」
すると、忍は笑って返す。
「ユニフォームで店がわかるとは、あなたも予備知識、ありますね。皆さんによく聞かれます。当店は制服専門アパレルの世界制服屋が関係しているんです。」
二人は、思わず顔を見あわせる。
「世界制服屋食堂部…!?」
それにはお構いなしで、忍は続ける。
「世界制服屋食堂部といういかめしい名前が正式名称なんですが、それでは雰囲気が出ないので、お店の名前はレストラン・ユニッツといいます。」
「へえ、世界制服屋食堂部ねえ…。あたしたちは世界制服屋警備部の警士なんだ。」
守村は上着のポケット、森川はショルダーバッグの中から、社員章を兼ねた黒革表紙の警備手帳を取り出す。
忍はそれを見て、続ける。
「警備部の方なんですか。だったらご存じのはずですよね。世界制服屋は制服専門アパレル。だからありきたりのユニフォームではつまらないので、いろんなところのウエイトレス制服を集めて、一堂に会するようにしたんです。」
「一堂に会する…ねえ…。」
守村が言うと、森川が次ぐ。
「なるほど。設立母体が同じだけあって、制服にはこだわりはあるってわけね……。」
さて。レストラン・ユニッツはユニフォームでは驚かされたが、出てきた料理のお味は、悪くなかった。メニューはなぜか魚料理が多く、肉類は少なかったが。
帰りに森川が、
「この店、どう評価する…?」
と言うと、守村は、にやりと笑って返す。
「あたりの店だね。ユリイカに次いでの、行きつけの店にしたいね。」

閉店後、店の掃除が終ると、最後まで残った忍ともう一人、神戸屋の制服姿の、黒髪ロングヘアのウエイトレス―ネームタグは三輪ゆたか―があいた席に座ったところへ、黒髪を短く刈り込み、これぞ料理人といったいでたちの、白衣姿で長身の男がのっそりと座る。
「調理場の後始末は、終ったぞ。」
とそこへ、レジにいた、ギャルソン・スタイルの長身の優男が売上計算を終え、話に加わる。
「売上げ計算、終ったよ。」
「警備部の人が来るかとは、思わなかったわ。」
コーヒーカップ片手に忍が言うと、ゆたかが次ぐ。
「警備部を引っぱれたら言う事なしだけど、本部勤務は行きつけの店を持っているからねえ…。一般客をもっと集めないと。」
「うーむ、それは諸刃の剣だな。変な客が来るようになったら、警備部を呼んで警戒するかもしれないな。」
これは、料理人。
「そうなったら牛山、お前さんがたたき出してくれ。」
優男の言葉に、牛山―と呼ばれた料理人は、返す。
「俺は調理場で忙しいから、そんなひまはないよ。馬野、お前さんのほうがそういった連中の対応は得意なはずだぜ。だから俺は、料理のほうに回るって言ったんだ。」
馬野―と呼ばれた、ギャルソンスタイルの男は返す。
「そうだったっけな。」


世界制服屋で従業員の制服を買っていた店が遂に左前になり、代金のかわりに店舗を引渡してきた。
女帝・タカミーナはハンターから報告を聞くなり、玉座から立ち上がってこう言った。
「奇貨置くべし!ゆくゆくは職員食堂や居酒屋で種々の秘密を雑談から聞き出し、表の顔ではビルメンテナンスと警備に加え、食堂までできるという強みができる。一石二鳥じゃ!ガーディーは警備部、アッシュは施設管理部を経営している。よってハンター、そなた制服屋は名目上の社長なのだから、食堂部の部長になれ。」
「え、ええ〜!?」
いきなりレストランを経営しろといわれたハンターも驚いたが、部下の怪人連中も同じだ。
秘密結社世界征服屋で一般部隊を率いるハンターは、一番信任している、部下のウマ怪人のタングス、ウシ怪人のタウロ、牛耳アマゾネスのミノア、馬耳アマゾネスのシノルを呼び、命じる。
「……というわけだ。近衛部隊のハーロウ、エフスキー、ジュン、エーコに相当する、人間に変身できる能力をもつそなたら
4人が頼りだ。世を忍ぶ仮の姿は一般人として、レストランを経営してほしい。」
「はいー!?」
「え〜!?」
かくて、世界制服屋食堂部は秋葉原と御徒町の中間地点にある店舗を利用し、制服専門アパレルが設立母体という強みを生かし、コスチュームにこったレストランを開店した。その名もずばり、レストラン・ユニッツ。料理は多国籍でなんでもありだが、牛と馬がベースの怪人なので、メニューは野菜と魚主体だ。店名は、制服を意味する
Uniformと、連合を意味するUnionに引っかけている。
筋肉隆々、ミノタウロスを思わせる外見のウシ怪人・ベナギュウことタウロ・ヤギュウは、バトルアックスを包丁に換えて、さすらいの料理人、牛山充。同じくウマ怪人・ベナラクサことケマス・タングスはギャルソン・スタイルの似合う馬野健太。アマゾネスの牛耳娘、ミノア・ホルスと馬耳娘のシノルバ・アストゥリアスは美脚と巨乳、黒髪ポニーテールが売りの三輪ゆたかと白金忍になり、世界制服屋食堂部を経営している。それが、今日守村、森川の二人が会った
4人になる。
「親会社が制服専門なんだから、日本食堂時代の衣装も調達できるわよね。それなら食堂車を再現して、釜飯を売ったら面白いかも。」
ゆたかが言うと、牛山が次ぐ。
「「峠のシェルパ、
EF63」の横川機関区、「おぎのや」の峠の釜飯か……。」
忍が次ぐ。
「警備服を利用して、取調室を再現するのも面白いかもね。そこでカツ丼しか出さないとかさ。制服フェチな男には、人気出るかもね。」
牛山が返す。
「誰が刑事や婦警になるんだよ…。警備部から呼ぶかい…、それとも忍とゆたかかい?ああ、それなら取調室酒場なんてのも、面白いかもしれないな。」
馬野が、ノートを引っ張り出していう。
「取調室酒場…、それ、いけるかもな。もっとアイデアを話してくれよ。」

秘密結社世界征服屋が世を忍ぶ仮の姿の三つ目は、世界制服屋食堂部。いったいこちらはどうなるのか。今後の展開は、乞う続編である。