粉砕伝説ジュリバン外伝第66話 〜怪力四人の本領発揮〜

粉砕伝説ジュリバン外伝
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〜怪力四人の本領発揮〜


「世界を制服で征服」し、制服による秩序ある社会をつくることを最終目標とする秘密結社、世界征服屋の精強を誇る近衛部隊を中心にして編成したのが、警備会社、世界制服屋警備部である。
名前こそ少々奇抜に聞こえるが、やっていることは他と同じ常駐警備、雑踏警備、交通誘導警備。コスプレイベントでの迷惑カメコ、盗撮対策と、同人イベントの雑踏警備を得意とし、男女とも冬服は、一世代前の警察官制服に似たデザインで、持っている車両は歴代のパトカーとして使われたものと同じなので、マニアとコスプレイヤー、各種イベント関係者のあいだでは有名である。
さて。
世界制服屋警備部は、地元の小中学校の通学路の防犯パトロールも引き受けていて、受持区内を徒歩、自転車、自動車で警らする。
今回は、自動車は熱川進警曹、清水清司警尉、徒歩は守谷ジュン警士、守谷衛子警長、自転車は園田方也警士部長である。
徒歩警らの守谷姉妹は、子供たちから「制服姿のお姉さん」として慕われている。ジュンは、うるさいことを言う連中がいないことをいいことに、警備部の冬用ワイシャツのデザインが現行警察官のものに似ているのを生かし、アニメ版『逮捕しちゃうぞ』の辻本夏実を意識した、無帽ワイシャツ腕まくりといった姿にもなる。今日は制帽を被っているが、場合によっては、衛子も三つ編みにして、夏実とコンビを組む小早川美幸に扮することもある。
自動車警ら班、自転車警ら班は、その光景を見ながら、車を出す。
園田は、白く塗られたダイヤモンドフレームの自転車、自動車警ら班の車は、往年の名車、日産と合併する前のプリンス自動車のころのスカイラインだ。
「守村を徒歩警らに回したら、とっつきにくくて不評だろうな。」
ハンドルを握る清水が言うと、隣りに座る熱川が返す。
「あいつは冬、外套姿で、校門の前に立たせたほうが絵になるな。」
小学校の隣りにある細い道に入ると、道をふさぐような形で車が止まっていた。スポーツカーと、スモークグラスの「走り屋」風の違法改造すれすれのが、しめて
4台。
「まったく、どういう停めかたするんだよ。」
清水が言うと、熱川が返す。
「どうする、警察に連絡して移動させるか…?」
「クラクションを鳴らしてみよう。それで気づかず、移動させないんなら、警察に連絡するしかないな。」
清水が言ったそのとき、前方から救急車がやってきた。
ほぼ同時に、熱川の膝下にある無線機の呼び出しが鳴る。
「徒歩警ら班より自動車警ら班、自転車警ら班へ。学校前の交差点で交通事故発生、救急車現場へ急行中、サイレン聞こえますか。」
熱川がふり向くと、学校の前の交差点に人だかりができていて、ジュン、衛子のほかに、近所の交番から通報で来た、宗村夏実巡査以下の姿も見える。
熱川は、無線機を引っつかみ、言う。
「自動車警ら班より徒歩警ら班、自転車警ら班へ、現在救急車現場へ急行中、しかし路駐に妨害されて前進できず。」
清水は車をバックさせ、救急車が通れるところまで待避し、二人は車を降りた。
救急車はまだ距離があるが、前進するか、迂回するかで迷っているようで、スピードを落とした。
清水はクラクションを数回鳴らしたが、車の持ち主らしい姿は見えない。警察に連絡してレッカー車を呼んだとしても、間にあわないし、ジャッキアップしてミニレッカーで移動させようにも、よりにもよって、今日は積んでいない。
しばしの間ののち、熱川がいう。
「…やるしかないか。ジュンと衛子にも、言わなきゃならないな。」
ややあって、清水は返す。
「人助けだ、やるしかない。」
「自動車警ら班から徒歩警ら班、自転車警ら班へ、小学校校門前に集合、これより障害物排除にかかる!」
「徒歩班了解。」
「自転車班、承知。」
まもなく、ジュン、衛子、園田がやってきた。
5人の正体は、秘密結社世界征服屋近衛部隊の将校。着ている制服は、亜宗太郎ことマッドサイエンティストのアッシュが作った素材、エンプレス・ガーディアンの衣装にも使われているガーディアン・クロスでできている。これは、Tシャツ程度の厚さで従来の防刃衣以上防御効果があるうえ、怪力を有する者は、生身の状態でも、正体を表したときと同等の能力を引き出すことができるから、乗用車なら簡単に動かせる。
清水が事情を説明すると、一同はうなずいた。
「人助けだからね。」
役割分担は、すでにできている。園田は誘導、あとは移動。
移動班は、ポケットから錠剤を一つ取り出し、口に入れる。
これは、アッシュの作ったプロテイン。瞬発的に筋力を増強する効力がある。
園田は救急車に走りより、ドライバーに言う。
「このまま前進してください、今、障害物を排除します。」
「できるのか…?」
迂回ルートを探していた車長が怪訝そうに返すと、園田は、断言する。
「できます、あの
4人なら」

4人はそれぞれ、ポケットから手袋を取り出し、はめる。ジュンは自らの拳を守る専用の皮グローブ、あとの3人は普通の木綿手袋か軍手だ。
「どこに放り投げる?」
ジュンが言うと、清水が返す。
「放り投げて壊したら、あとあと厄介だからな。校庭に置かせてもらおう。」
「自業自得、こんなところに停めているのが悪いんだから、ひっくり返してやってもいいのにね。」
衛子が言うと、熱川が次ぐ。
「俺だったら、ひっくり返してやるけどな。」


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それぞれ手がかりを見つけると、
4人は、車を模型か小道具のように持ち上げてしまった。しかも、それを頭上にさし上げている。
騒ぎを聞きつけて集まってきた人々から、特撮物のヒーロー、ヒロインのような姿を見て、驚きの声があがる。
その中には、やっと気づいた車の持ち主もいる。
「んな、な!?」
「何かの撮影かい…?」
救急車の車長は、驚く。
「奇跡だ…。」
4人は、それぞれ持ち上げた車を校庭に置き、清水が右手をさっと上げ、合図した。
園田が言う。
「ね、言ったとおりでしょう。では、このまま直進してください。」
車の持ち主は驚いた顔で、立っている。
衛子が言う。
「無余地駐車になります。救急車を停めて到着が遅れたから、結果的に負傷者が死んだと遺族から訴えられる可能性は出てきますよ。今回は、そうでなくてもね。」
様子を見に来た、宗村夏実巡査が次ぐ。
「菊屋橋交番の、宗村巡査です。一部始終を見ていました。守谷警長の言うとおり、無余地駐車で立派な交通違反です。」

無余地駐車の連中は、本物である夏実巡査以下に任せ、巡回を終えた
5人は、上官の近藤衛恵警監、内藤武士警正に一部始終を報告する。もちろん、怪力で路上駐車の車4台を移動させ、救急車を通したこともだ。
近藤警監が、
「人助けだからね、やって正解よ。」
というと、内藤警正が次ぐ。
「無事、負傷者は救急車で搬送されて、別段命に差し障ることはなかったそうだし、無余地駐車の連中も、立件できたそうだ。」

警備部では特に話題になっていなかったが、
5人の行きつけの喫茶店ユリイカでは、大騒ぎになっていた。
「いやあ、すごかったねあれは。俺がジャッキを取りにいって、現場へ来たらあれだろう、我が目を疑ったね。」
高村宗光が言うと、シリアが次ぐ。
「特撮物の、ヒーロー、ヒロインかと思いました。」
千尋がいう。
「そうそう、変身しないでそれだけの能力が出せるキャラなんて、聞いたことがないわ。」
カズこと新堂一幸が続ける。
「どこにそんな力、出す能力があったのかな。」
この面々は自営業なので、騒ぎを聞きつけ仕事を放り出して見物にいっている。もっとも、高村は消防団員だから、その有様を見て一も二もなく、移動させるべく南雲モーターズに飛び込み、事情を説明し、機材を整え行ったところにあの光景。驚いたの何の、だ。
消費者センターの渋川あずさが返す。
「アメリカであった、ボディービルダーやフィットネスモデルが乗用車を持ち上げるイベントの写真を見たことあるんだ。それだと
10人近く集まって1台の車を持ち上げているんだけど、タイヤが地面から数十センチ浮いている程度だったからねえ、今回は1人が1台の車を頭上にさし上げていたんでしょ、不思議よね〜。」
一方、青い顔をしてコーヒーを飲んでいるのは、ジュリバンの正体、大川樹理。小声で、カズと南雲陽子に言う。
「あたしはジュリバンになっても、車一台動かすのがやっとなんだよ…」
「あの
4人はいったい……。」
南雲が言うと、カズが締める。
「本物の、ヒーロー・ヒロインなんじゃあないか?」
熱川がいう。
「いやあ、何とかしなきゃあいけないっていう気持ちだけだから、何も覚えてないっす。」
清水が次ぐ。
「火事場の馬鹿力…といったところでしょうか。」
「そうそう、わたしもあの時どうやって車を持ち上げたか、覚えていないもの。」
衛子の言葉に、ジュンがしめる。
「人間の潜在能力って、すごいって思ったね。」

本来なら悪事で人々に迷惑をかけるはずが、人助けのためなら自分の正体を表すこともいとわず能力を発揮する、矛盾した組織の秘密結社世界征服屋。存在もだが、外見も、悪役よりヒーロー・ヒロインが向いているようだ。