下手の横好き模型雑記帳
〜特集「日本の警察官」〜

クリックすると画像は拡大されます


「特集 世界の婦警さん」で日本版を出すならどうする…と調べたところ、日本内地だけでも冬服で男性9回、女性5回のモデルチェンジがあり、警部補以上と巡査部長、巡査ではデザインが違う時期もある…などということがわかったので、ここでは、「日本内地の巡査を、1/35で模型化する」という設定で話を進めていくことにする。
本題に入る前にざっと制服のあらましを書いておくと、以下の通りになる。また、便宜上昭和
21年までは勅令、25年以降は国家公安委員会の政令が出た年を制服の制定年にしているが、実際は資材調達の関係でそれより2年ほど遅れることが多い。
参考資料の詳細は文末注を参照のこと。


1875・明治8年〜1880・明治13年
フロックコート式7つボタン詰襟式。ポケットはなし。襟と袖の線で階級を識別。ズボン縫い目に黄色の線1本(全階級共通)、ボタンは桜花。
1880・明治13年〜1896・明治29年
ダブルの5つボタン詰襟式。左胸に切り込み式ポケット、左右腰ポケットはフラップつき。明治18年から巡査の等級がなくなり、制帽の帽章が旭日章になる。ボタンは旭日章。
1896・明治29年〜1907・明治41年
シングルの5つボタン詰襟式。左胸に切り込み式ポケット、左右腰ポケットはフラップつき。袖章で階級を識別。制帽は19年式軍服に同じデザインで、白線の鉢巻。ボタンは旭日章。
1908・明治41年〜1934・昭和9年
シングルの5つボタン詰襟式。左右の胸と腰に切り込み式ポケット。肩章で階級を識別し、襟に旭日章。制帽は英軍式で、鉢巻は黒。帽章は桜の葉とつぼみが旭日章を抱くものになり、プレス金属製。ボタンは真鍮無地。
1935・昭和10年〜1946・昭和21年
シングルの5つボタン詰襟式。左胸切り込み式ポケット、左右腰ポケットにフラップがつく。現在の詰襟学生服と同じデザインになり、肩章のデザインが変わる。帽章のプレス打ち出しだった桜の葉とつぼみが金モールになる(旭日章は金メッキ金属)。ボタンは旭日章。


左より、明治29年式巡査制服、明治41年式巡査制服、昭和10年式巡査冬服、昭和10年式巡査夏服。

昭和21年以降は婦人警察官が採用されているが、男性と同時のモデルチェンジは2回しかない。また、32年から51年までは巡査として採用したところの、所属庁の長が定めるものになっていた。
ここでは警視庁のバージョンを、男女別で書いていくことにする


男性
1946・昭和21年〜1950・昭和25年冬


濃紺開襟式小開き4つボタンの上着に同色のズボン。胸と腰に2個ずつフラップつきポケット。腰に帯型のひだをつける。装備品を帯革で吊り、拳銃を装備。右肩より7センチの位置に国警・自警の識別章と山形の階級章、銀色旭日章をつける。ネクタイの色は紺色。
1946・昭和21年〜1956・昭和31年夏

カーキ色ワイシャツに同じ色のズボン。他は冬服に同じ。制帽は同色。
1950・昭和25年〜1957・昭和32年冬

濃紺四つボタン背広式。デザインは43年式(後述)に似ているが、胸ポケットが大きくなり、腰は飾りフラップだけになっている。帯型のひだをなくしたかわり、肩にまちをつけている。ほかのデザインは21年式に同じ。
1957・昭和32年〜1968・昭和43年冬
上着が3つボタン下がり襟式になる。階級章(銀色地の中央に旭日章ひとつ)が両襟の上に移動。腰ポケットが復活。合服は冬服と同じデザインで色はグレー。
1957・昭和32年〜1968・昭和43年夏
シャツ、ズボンの色がグレーになり、階級章の位置は右胸ポケットの上に移動する。
1968・昭和43年〜1994・平成6年冬
上着が4つボタン下がり襟式になり、ポケットのデザインが変わる。階級章が銀地の中央に金線、その上の中央に旭日章ひとつというデザインになる。合服の色合いは灰青色に。
1968・昭和43年〜1994・平成5年夏
灰青色の半袖シャツに同色のズボンになるほかは、冬に同じ。階級章の位置は変わらず。
1994・平成6年〜冬
3つボタンになり、左腕に所属警察署の記章をつける。階級章は左胸ポケットの上に移り、略綬式に変わる。それまでの装具を表に出すデザインから、上着で隠すようになる。野球帽式の活動帽とブルゾン式の活動服ができる。合服は白いワイシャツになる。
1994・平成6年〜夏
水色半袖ワイシャツになった以外は冬服に同じ。

女性
1946・昭和21年〜1956・昭和31年冬



濃紺背広式3つボタン、左右の胸にフラップつき、左右の腰にフラップなしポケット。スカートとズボンも同色。襟はテーラード・カラーで、靴は黒色オクスフォード(ひも靴)。制帽は「つるのこ帽」ネクタイの色はえんじ。
1946・昭和21年〜1950・昭和25年夏

カーキ色背広式3つボタン、左の胸と左右の腰にフラップありポケット。スカートは同色センタープリーツ。襟はテーラード・カラーで、靴は黒色オクスフォード(ひも靴)。制帽は同じ色の「つるのこ帽」
1951・昭和26年〜1966・昭和41年夏
カーキ色オープンシャツに同色のタイトスカート、麦わら帽またはソフト帽。階級章は左腕。
1957・昭和32年〜1970・昭和46年冬
濃紺背広式3つボタン、襟がピークドラベル式になり、階級章は右胸ポケットの上(1968・昭和43年からは両襟)になったほかは、デザイン変更はなし。
1967・昭和42年〜1970・昭和50年夏
灰青色3つボタン型スーツに変更。(これ以上のデータ入手できず)
1970・昭和46年〜1976・昭和51年冬

生地の色が濃紺から灰青色に色が変わり、4つボタン背広式の上着で、左胸と両腰にアウトポケット。襟はピークドラベルのままで、スカートはセンタープリーツひざ上3センチ。「ド・ゴール帽」のニックネームのある制帽が制定されて、白の警笛吊りひもがつく。靴は黒のローファーかパンプスに。
1970・昭和46年〜1976・昭和51年夏
青色4つボタンのサマースーツで、靴は白のローファーかパンプスのほかは冬と変わらないが、昭和49・1974年まではベージュ、白など都道府県でまちまち。階級章は右胸。
1976・昭和51年〜1994・平成6年冬

左、現役時代にはレアだったパンタロン姿。右、スカート姿

ポケットのデザインとスカート丈がひざ下5センチになったほかは変化なし。
1976・昭和51年〜1994・平成5年夏


ポケットのデザインとスカート丈以外は変化なし。
1994・平成6年〜女性


左は交通安全イベントのキャラクター、一人二役を演じている


制帽が山高帽型になり、合服にベストが制定された以外は男性と同じ。スカートがひざ上3センチベルト止めになり、靴は黒色オックスフォードになる。ネクタイの色も灰青色に統一。
1994・平成6年〜夏
男性に同じ。ベストの着用もできる。

平成6年式までは、各都道府県警でネクタイの色や装備が微妙に違っている。とくに婦警の場合、昭和51年式までは所属庁の長官が定めるものとされたので、夏にも制帽を被るところや、靴も冬と同じ黒色というバリエーションがあったが、平成6年式以降は全国で統一されてしまったため、つまらないという人も多い。
昭和
21年までは夏も冬も詰襟式制服で、明治8年から13年は上着が黒でズボンは白、それ以降は夏の白と冬の黒・濃紺の2体セット、明治41年からは、黒の上着に白いズボンの合服もあるので、この2つの時期だけは6体になる。
昭和
21年以降になると、夏冬男女2体の合計4体が1セット。婦警さんの場合、昭和46年以降は略帽(つるのこ帽)と制帽(ド・ゴール帽)があるので、ヘッドパーツの交換ができるようになっているとうれしい話になる。
バリエーションの多いことには筆者、くらくらしてきた。
昭和
23年から29年までは人口5千以下の町村のためと自治体警察では対応できない事件の場合に備える国家地方警察と、市と人口5千以上の町村が運営する自治体警察の2本立ての時期があり、自治体警察は各々記章を持っていたし、平成6年からのものは都道府県の記章がある。自治体警察すべてを再現するのは無理なので、自治体警察では、東京23区を担当した警視庁や大阪市、横浜市といった有名な市、平成6年以降の都道府県警は添付デカールにするのも方法かもしれない。
拳銃嚢も昭和
21年式は米軍から払い下げられた旧軍の南部14年式、25年式は米軍払い下げのスミス・アンド・ウエッソン、32年式は同じく米軍払い下げのコルト・ガバメント、43年式以降は国産のニューナンブ…と時代を感じさせるようすると面白いかも。
模型、完成品問わずポーズが問題になる。ただ立っているだけ、というのは、絵心のある人、模型作りの好きな人ならご存知の通り、楽に見えてけっこう難しい。手に腰にあてる、後ろに組む、サーベル装備の昭和
21年までは剣、それ以降は警杖を杖にする、戸口調査簿(昭和21年以降は巡回連絡簿)を持つ、婦人警察官ならチェック(ミニパトの中から字を書くための、ジュラルミン製の伸縮自在の棒)や誘導棒を片手にしている…と、ある程度似たようなものになってしまうのは仕方がないだろう。え、現行制服や43年式、51年式のものの場合は、男性は無帽で下駄をはかせたり、女性ならMG42を持たせてもいいんじゃないかって…。それはねえ…。版権があるでしょう。やってみたいものではあるけれど…。
…と、ここまでつらつら書いてきたが、『逮捕しちゃうぞ』や『こちら亀有公園駅前派出所』も
1/35で再現したいのは本心だ。両津勘吉を3式中戦車の脇に置いたり、辻本夏実を90式戦車に乗せてみたい…。(これこれ。)
他には、日中戦争開戦以降、警察官が応召や占領地の行政官として徴用されたため、昭和
123年から17歳〜20歳の青少年から採用した警察事務職員の少年警察官は、警視庁の場合カーキ色折襟5つボタンの98式軍服に似たデザイン、埼玉県では黒色国民服式の制服を着ていた。また、交通事故が増加した昭和40年代に女性を中心に採用した交通巡視員は、昭和45年から51年までは、昭和46年式警察官のものに近いが、ポケットの形がちがい、スカートのプリーツがなく、野球帽型の制帽となっている。
とまれかくまれ、夏冬合わせて
32体がずらっと並ぶのは、ある意味壮観だろう。それに少年警察官や交通巡視員まで入ったら…。ぜひとも一回やってみたくはありますな。
特科部隊や外地(朝鮮総督府、台湾総督府など)もやってみたいが、そこまで入れたら収拾がつかなくなるので、また次回ということで。


警察官服制は、昭和21年までは勅令、23年からは国家公安委員会規則という形で定められており、女性用は巡査として採用を続けた地方では、昭和32年から46年までは所属庁の長官が定めるという形になっている。もっとも簡単な調べ方としては『警視庁史』や『埼玉県警察史』といった各都道府県警が出した団体史を使う方法があるが、確実なのは、歴年の『官報』にのった法律、政令、訓令、規則などを年ごとに列記した『法令全書』を使う方法である。しかし、32年から46年までの女性用は掲載されていないので、筆者は公式文書ではなく、サークルMike Sugar みかわしん氏作の『婦警さんマニュアル』シリーズ第13作『旧制服グラフィックス』も参照している。 (現在はサークル名を「ハタノヤ」に改名したとのよし。)

参考文献
『埼玉県警察史』、埼玉県警察本部、昭和52
『警視庁史 昭和中編』、警視庁史編さん委員会、昭和
53
『千葉県警察史 第
3巻』、千葉県警察本部、平成1
『沖縄県警察史 第
3巻』、沖縄県警察本部、平成13
「警察庁公報」、昭和
51527
「官報」、昭和
311219日、昭和43823日、昭和45911日、平成6713
『婦警さんマニュアル 第
13 旧制服グラフィックス』サークルMike Sugar みかわしん、平成10